3組の普通婚夫婦から「黒くて醜い」と拒否されたミナス州在住の5歳の子どもが、白人ゲイ・カップル(同性婚)の養子となった。実の親はアル中だったため、子どもは養護施設に身を寄せていた。新しい生活のスタートを切った一家は、偏見を克服し、社会から自然な形で受容されるべく奮闘しているという▼同性愛者が虐げられ、時には命を奪われるブラジル――彼らに男女の夫婦と同等の権利を認める勇断は、先進国でもまだ珍しいのでは。日本でもここ最近、ようやく同性愛者や性同一性障害者にも養子縁組を認めようとの動きが出てきたが、まだ血縁や伝統的な家族形態が重んじられており、養子縁組率はわずか10%程度に留まっている▼支援団体GAASPによれば、当地では子どもの方が足りないほど、里親希望者が多い。独身、未亡人、事実婚のカップルでも里親になれるため、養子縁組が一般的だ。だから同性愛者による養子縁組にも、比較的抵抗が少ないのだろう▼冒頭の子どもを引き取ったジルベルト・スコフィールドさんは、州議会議長に送ったメッセージに次のように書いている。「ゲイやレズビアンの里子となった子どもは皆、異性婚の夫婦に捨てられ、ネグレクトされ、ぶたれた子どもたちだ」▼同性婚カップルは子どもを作ることが出来ないゆえに、「親になれた」という一点で幸せを感じ、子どもの肌の色や過去にこだわらず、愛情を与えることができるのだろう。自身が差別を受けるからこそ、虐待された子どもの気持ちにも寄り添える。不運な孤児の受け皿になっている彼らのあり方は、親とは何かを問いかけている。(阿)