日本企業による当地進出は積極的のようだ。青島孝雄さん(80、東京)の独自調査により判明したもので、今年だけでもすでに47社が進出しており、「ブラジル全土の日本企業は合計約750社にも上る」と話している。ブラジル日本商工会議所の平田藤義事務局長によれば「600社ぐらいはありえる。昨年から訪問件数が明らかに落ちており、今年は3割減といっても言いぐらい」と昨年来の不況が影響しているとのべた。
同会議所の会員は約370社で、そのうち進出企業は233社。平田事務局長は「その2倍以上、600ぐらいはあってもおかしくない。増え続けたのは、2008年にリーマンショックでブラジルが落ち込まなかったので、風向きがアジアからこちらに変わって、ブラジルが追い風を受けたから。でも昨年から風向きが変わった。今はメキシコが追い風のようですね」と見ている。
一方、青島氏は「全伯で約750社の日本企業が存在する。支社を含めれば約千社」としている。同調査によればサンパウロ市内だけでも404の本社・支社があり、内訳はパウリスタ大通り界隈が178、セントロ29、南部133、西部44、東部15、北部5と見ている。
最近の傾向は、サンパウロ市郊外(ABCD地区やサントス)に増える傾向があり、195社にも上る。うちカンピーナス方面だけで半数以上の108社を占める。「ジュンジアイー、バルエリ、インダイアツーバも含めた地域だがかなりの企業数になる。例えばホンダの子会社などが新たに進出している」と説明した。
サンパウロ州外ではリオ108(うちリオ市中心街35)、ミナス44、パラナ40、南大河32と続く。その他の州は10社前後。北部に目を移すとアマゾナス州都マナウス市内だけで37社。また第一工業団地には35社、第二には5社存在し合計77社という。「税制が優遇されており、魅力を感じる企業も多い」と話した。
青島氏によれば今年に入って47社が進出済み。「日本から取り寄せた海外進出企業総覧(東洋経済社)と照らし合わせたら、調査と別に新規で30社ほど見つかった」という。「七大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商、双日)と電通関連企業の買収・投資だけで10社もある」と明かした。
平田事務局長は、今年進出した企業は2、3年前に進出を決め、それを実行したからでは―と見ている。「買収に関しては11年がピーク。ブラジルでは一から作るより、ノレン(会社やブランド)を買った方が早いという傾向が強まった」と見ている。
最後に「ペトロブラス汚職疑惑など難しい局面に入っているが、その影響で株価が下がった分、戦略的に考えれば『むしろ今が買収のチャンス』とも考えられる。そんな思考を持った企業に増えてほしい」と期待している。
【コラム大耳小耳】
進出企業の独自調査を続ける青島孝雄さんは1960年に移住し、東京銀行で外貨為替を担当。約20年間勤務した中で、最後の数年は会頭秘書などの責務についたとか。当時の交友関係から、企業の進出・撤退の話題が常日頃から身近にあるという。かつては『実業のブラジル』誌があったが、今はその種の企業系雑誌がない。実際の進出数を知ることは難しいが、青島さんの情報は〃足で稼いだ〃ものだけに貴重といえそうだ。