昨年までウルグアイの大統領をつとめていたホセ・ムヒカ前大統領が27日朝、リオのブラジル・マスコミ協会(ABI)で講演を行い、世界的に有名となったメッセージ色溢れるスピーチをブラジルの聴衆の前で聞かせた。
ムヒカ氏と言えば、日本でもSNSを通じて一躍有名になったことがあるほど「感動のスピーチ」を聞かせる人物として知られている。
きっかけとなったのは、2012年に行われた環境サミット「リオ+20」の最後に行われたスピーチで、「もしドイツで一世帯が持つだけの車をインドが持ったら地球はどういうことになるのか。人間が吸収する酸素はどれほど残るのか」と、世界中の消費が市場の競争原理と共に過熱している現状を批判した。
このスピーチでムヒカ大統領は世界的に有名となり、その過程で、同氏が大統領官邸に住むのを拒否して一般住宅に住み、個人資産が中古のフォルクス・ワーゲン一台のみという私生活も知られることとなった。
そんな「ムヒカ節」はこの日も聞かれた。ABIから「2015年の人物賞」を与えられたムヒカ氏は、そのスピーチで、昨今のブラジルが抱えている経済的、社会的苦境に対し、「問題は国の空気自体が負け犬根性にとらわれていることで、〃何をやってもだめだ〃と思っている。ブラジルは素晴らしい国なんだから、前進できるか否かはあなた方の姿勢にかかっている」と語った。
さらに、最近、ジウマ大統領に対して罷免を求める運動があることに関しては、「多くの人が近年のブラジル社会がどれほど変わったかに気づいていない。まして、軍政に戻ることを求めるなんて、おかしな連中までいるなんて愚の骨頂だ」と厳しい発言を行った。だが一方で、「政治家は一般大衆と同じ、質素な暮らしをするべきだ。一部の特権階級のような暮らしをするのではなくね」とブラジル政界を揶揄するのも忘れなかった。
ムヒカ氏は大麻の生産や販売を合法化する大胆な政策を実施したことでも知られるが、その持論はこの日も同じだった。「密輸販売そのものが麻薬より悪いんだ。私たちの国でもまだ実験段階で、結果は出ていない。ただ何かを変えたいなら同じことだけをしていてはだめだ。暴力が増えるだけだ」と述べた。
そして、有名となった「ハイパー消費」への批判も行い、「幸せになるために、携帯電話を3カ月に1度、車を2年に1度買い替えて勘定を払う必要があるのか。そんなことより、息子たちにキスをし、友人や愛する女性と一緒にいる時間の方が意味があるし必要だ」とし、「心の豊かさ」には別の基準が必要なことを訴えた。(27日付オ・ジア・サイトより)