【既報関連】先月25日に下地幹郎衆議が説明会を行なった4世ビザ構想は本人らの好感を呼ぶ内容だったが、読売新聞31日付記事はもっと制限が厳しい法務省案を報道した。年間1千人程度の受け入れと規模が小さく、来日時に日語検定N4程度の日語能力が必要、家族帯同は不可と報道されている。下地衆議の説明と大きく異なるもので、四世らの間に波紋が広がっている。
下地衆議の説明では年齢制限は「18歳以上」だけだったが、読売新聞が報じた法務省案では「18~30歳まで」に限定。衆議は家族帯同での滞日の可能を示唆していたが、法務省案では帯同不可に。
衆議は年間受け入れ人数枠を想定していなかったが、法務省案では1千人ほどと制限され、それをブラジルやペルー、米国など日系社会を有する各国や地域ごとに分ける形になっている。
衆議の方針では最初から3年間のビザで、その後も更新可能との考え方だった。来日前に日本語能力を問わないが、日本に来てからは受け入れ企業で日本語学習する機会を設けるという方向性を打ち出していた。
今回の法務省案では、来日前に簡単な日常会話が可能な日語能力(N4程度)が求められる。一年ごとに在留資格を更新し、最長3年の滞在が許可される。在留資格更新時にもN3程度の日語能力が必要となる。さらに長期滞在する場合は結婚や就職などによる別の在留資格が必要だ。
これに対し、ブラジル時間の31日深夜、在留ビザを待ち望む日系4世らが議論する通信アプリのグループ「Saga Yonsei」には、さっそくこの記事をポ語訳したニュースのリンクが拡散された。
その記事を読んだ4世らの多くは「次の動きを待とう」と落ち着いたコメントを残す人が多かったが、中には「下地衆議の提案を通して欲しい」という要望や「来日に必要な日語能力の制限を設けることには賛成だが、年齢制限と家族帯同が不可能なことには反対」といった意見もかなり書き込まれた。
なお、読売新聞はこの件の解説記事も《「労働力扱い」避ける施策を》との見出しで掲載した。いわく《日系2世、3世の高齢化が進む中、次世代を担う4世に日本を体験してもらい、現地との懸け橋となってもらおうとする新しい在留制度には一定の意義がある》と認めつつも、《国には、4世が日本の社会や文化を学べる機会を充実させるなど、新制度が単なる「労働力の確保」にならないようにするための施策が求められる》と釘を刺している。
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今回の読売新聞の記事がでたタイミングは、下地衆議による4世側の期待を受け止めた〃熱い発表〃を受けて、法制化を担当する法務省側が「4世らの期待が過熱しすぎないように水を差す」という揺り返しのニュアンスを感じるもの。このやり取りを繰り返す中で、徐々に本当の着地点が決まっていくのだろう。下地衆議は「8月中に制度設計を固め9月に意見公募を行う。10月に集めた意見を反映し11月に制度を確定する予定」としていた。その間に、下地衆議の意向と法務省案の間のどこかに決着するのでは。
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日系四世の在留資格についての新たな報道で、日系4世らは「動向を見守ろう」と不安に駆られつつも、比較的落ち着いた雰囲気。一番盛り上がったのは「日語能力検定に合格するには」という議論だ。「N4なら簡単だ。問題は資格更新時のN3だ」といった声や、「みんな、アニメを見て勉強しよう」という冗談も。さらにN4・3の合格に必要な平均勉強時間・語彙・聞き取り能力・漢字の数を示した表の画像も張り出された。訪日前に日語能力の制限を設けられたら、もしかしてブラジル全国の日本語学校に生徒が殺到するかも?