日本では2000年から2004年のゴールドプラン21で、認知症高齢者グループホームが急速に普及していった。グループホームを含む介護老人福祉施設(特養老人ホーム)の入所者の97・2%が認知症患者である。
そこには自ら選んで入所する者、あるいは、親を棄てるつもりはないが、介護はできないと割り切って新たな介護集団に最期を任せる家族のためである。
「家族を介護で疲れさせない」ために、専門家にできることを任せ、医師も提案し、支援していく。家族がすべてを背負うのではなく、専門家と共に介護するという考えは前向きに受け入れたいものである。
老人介護施設の利用の良し悪しは、本人やその家族の状態にも依る。子供に面倒をかけるというストレスが軽減され、栄養面も良く、自宅介護では得られなかった楽しさを満喫して、100歳まで生きる方が結構多いという報告もある。
長生きは家系・遺伝の影響が大きいという説はよく耳にすることだが、健康で長生きする人にはいくつかの「性格的な」共通点があるそうだ。
アメリカの心理学の研究によると、次のような性格の人が長生きするそうだ。
(1)几帳面で、仕事ができ、社会的な地位も高い。
(2)意志が強く、几帳面で誠実
(3)外向的で社交的
(4)不安が強くて、細かいことに気が付く「神経症傾向」
(5)思いやりがあって、周りに調和することを大切にする。
「誠実、外向的、調和」という性格は男女に共通し、女性の場合は、家族の面倒をよく見て、人付き合いがうまい。グループの仕切り屋、ゴッドマザー的性格が特徴。
男性の場合は、好奇心旺盛、新しいこと好き、適応力がある、飄々としてマイペース。といった性格的特徴の人が長生きしているという。
昨年2017年7月18日に105歳で亡くなった聖路加国際病院の日野原重明先生のことはつとに有名である。日野原先生が実践していた「10年日記」という習慣は、「毎年一つ新しいことを始める。常に新しい目標を掲げる」ことであったという。
「意志が強く、几帳面で誠実」、自己管理、仕事への情熱、周りの人への気配り、なんといっても「死ぬまで現役」を貫いた模範的な人生であった。また食欲も旺盛で、三日に一度はステーキを食べるのが楽しみだったという。
高齢者は粗食では長生きできない。健康な高齢者には「牛肉、豚カツ、大好物」の人が多いというが、もちろん日々の健康管理は基本である。
また100歳まで生きる人の身体的特徴の一つに糖尿病がわずか6%しかいない。このデーターは海外の調査でも同じ結果が出ている。
90歳以上で糖尿が無いということは、食事制限がないため、低栄養に陥らないことになる。
「意欲的」な高齢者は「転んでもタダでは起きない」。リハビリに積極的に頑張って、「絶対寝たきりにならないぞ!」という強い意志を持っている。
高齢者に、「若い頃と比べて幸せですか」、「今に満足していますか」という質問をすると、ほとんどが現状に「満足している」と答える。100歳でも「死が迫っている」という感覚は薄く、「いますぐ死にたい」という人はほとんどいない、というのである。
人間に生まれる確率は、1400兆分の一、一億円の宝くじに100万回連続して当たることに相当する、という記事を読んで、「億や兆」という大きな数字がおもしろかった。仏教では、「天から糸を垂らして、地上の針の穴に通す」ほど人間に生まれることは稀であると説いている。
想像できない確率で 「頂いた命」を、有意義に生きる。それも「100年という長い時間を、可能な限り健康で、前向きに生きよう」というのが「長すぎる老後」の挑戦だ。
私たちは、そういうことを目標にして生きられる、稀に恵まれた平和な時代に巡り合わせていることを、まずは感謝しなければならないであろう。(終わり)
【参考文献】
慶応大学医学部百寿総合研究センター広瀬信義『人生は80歳から』
毎日新聞社出版2015