平成十三年(二〇〇一年)の年初にあたり、ブラジルへの移住者及び日系人の皆様並びに在留邦人の皆様に謹んで新年のお慶びを申し上げます。
新千年紀の幕を開けた世界は、政治、経済、社会のいずれの面でも多くの挑戦に直面しております。冷戦の終焉によって世界的規模の戦争の恐れから解放された世界においても民族紛争や地域社紛争が頻発しております。今日、人類は民族、宗教といった各々の帰属意識の相克を乗り越え、対話と協調により問題を解決する国際社会を築かなければなりません。
また、経済のグローバル化の進展や情報通信分野の革新的変化は、国際社会に未曾有の繁栄をもたらしました。国際社会の持続的な安定と繁栄を確保するために社会的公正の確保や地域環境問題への配慮とともに、貧困や社会的弱者への対応などの問題につき、引き続き国際社会が一致協力して対応することが必要であります。
多くの国におけるこれまでの幾多の試練を経て、我が国憲法の中心的な柱である自由と民主主義、そして基本的人権の尊重といった価値が一段と国際社会に定着したことは歓迎すべきことであります。これらの価値を実践していくことが、社会、経済の発展、平和の礎となることを、今後とも国際社会全体が力をあわせて証明していかなければなりません。このような共通の価値観の実現のためにも、文化的、社会的背景の異なる各国、各文明間の対話を繊細さと寛容の精神で進めていく必要がありましょう。
このような認識の下、より平和で安定した未来を築くために、我が国の近隣の状況が変化する中で、各国・地域との協力関係の発展、国連を中心としたグローバルな問題の解決に一層努力していく必要があると考えます。海外に居住する皆様のご理解とご協力を得まして、この様な我が国の外交政策を積極的に推進していきたいと考えております。
昨年五月、第四十一回海外日系人大会が清子内親王殿下のご臨席を賜り、盛大に開催されました。政府と致しましては、海外日系人社会において世代交替が進展する中、日本の良き理解者である日系人社会との関係を一層重視して参りたいと考えております。
昨年六月に実施された国政選挙では初の在外投票が行われ、海外の有権者の皆様の声を国政に反映させることが可能になりました。
また、長年要望のありました本邦における日系人センターについても、国際協力事業団(JICA)が新しい国際センターを来年中にも横浜に開設する計画を進めております。
ブラジル在住の邦人及び日系人の皆様におかれましては、政・官界、産業界、芸術・文化界等の様々の分野でご活躍され、ブラジルの経済・社会の発展に一きわ貢献をしておられます。また、両国間の相互理解、友好親善関係の増進に重要な役割を果たしておられます。私は、皆様が我が国とブラジルとの「懸け橋」として、今後とも各方面でご活躍されることを期待しております。
最後に、皆様の新年におけるご多幸と一層のご繁栄を心から祈念いたします。