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俳優・竹本孝之の連載エッセイ-第3回-携帯電話-校内には持ち込み禁止

2001年10月25日(木)

 今、日本の中学生の中で、驚異的なスピードで広がりつつあるツールが『携帯電話』である。全世界的には一三%に留まる携帯電話の普及率が、日本では五〇%を超える。実際、中学生日記に出演している約三百人の生徒達の内、八〇%近くが携帯電話を所有している。だが、この携帯電話が今、様々な問題を抱えている。
 学校教育の場では、殆どの学校が携帯電話の持込を禁止しているのが現状だ。しかし、実際は生徒だけではなく、親も携帯電話を持つ事を推奨しているケースが見られる。このようなズレが何故起こるのだろう。
 携帯電話に付随する犯罪が、今の日本では多くなっているのも事実である。携帯電話では、ただ会話をするだけではなく、メール(相手に、文章として文字を送る機能)でのやり取りが多く使われる。これは、相手の時間やタイミング等をあまり気にする事無く、こちらの意思を伝えられる便利な機能だが、このメールが犯罪に関わる重大なアイテムになってしまう事も在る。事実、この機能を利用した、『出会い系サイト』なる物も多い。これは、メールを使って見ず知らずの男女が知り合えるというものだが、実際に顔も見たこと無い人間と会話が成り立つ訳なのだから、とても危険なのだ。
 しかし、悪い事ばかりではない。先日、日記に出演している女子生徒に聞いた話では、「私の学校に、余り話さない子がいて、(話さないのではなく、返事を返そうにも声が出ない。元から出ないのではなく、声が出づらくなった)その子に交換ノートを渡したのだけれど、携帯を買ってもらってからは、リアルタイムでその子とやり取りが出来る様になった」とか、「何時も会えない違う学校の友達とも簡単にやり取り出来るから便利だ」と言う話を聞くと、やはり便利だなとは思わされる。
 親の立場からの意見では、「子供が塾に通っていて、帰りが遅くなるので心配。だから、携帯電話を持たせています」「色んな意味で危ない世の中になっているので、子供が今何処に居るのか分かるように、持たせています」等の、非常時の為にと言う声が、多く聞かれた。
 新しく手に入れた、コミュニケーションツール。今更すべてを白紙に戻す事は出来ない訳だから、今後必要となってくるものは、使う人間のモラルだと思う。便利さ故の危うさをしっかり認識し、TPOをきちんと考えて使うようにしたい。その為には大人がきちんと手本を示さなければ…。いまだに電車の中や公共の場で、携帯電話に大声で喋る大人を見かける。
『でも、本当に大切な事は、相手の目を見ながら自分の口できちんと話さないと、一人前の大人とは呼ばれない』
(中学生日記のセリフより)