2003年1月1日(水)
新年明けましておめでとうございます。
新しい大統領が誕生し意気衝天の勢いのブラジルで新年を迎えられることを大変嬉しく思います。
一昨年十一月の着任以来、「開かれた、役に立つ総領事館」を心掛けて、様々な機会を捉えて日系社会の皆様とお会いし、多岐に亘る分野で御活躍されている皆様の御姿を拝見して参りました。多くの日系人の方々がブラジル社会のあらゆる分野に根を張り、日本と伯との太い絆になっておられることを実感いたしました。この日系社会が果たしている貴重な役割が後世に亘って引き継がれていくことを願ってやみません。
今日の栄えある日系社会は、あと五年で移民百周年という大きな節目を迎えます。百四十万人にも及ぶと見られる日系社会の担い手が、一世から二世へ、そして三世、四世へと世代交代が進んでいくなかで、日本語離れ、日系社会離れの傾向が強まっているやに見受けられます。移民百周年に向けての準備作業は、同時に、如何にして日系社会の活性化を図っていくかを議論する格好の場でもあると思います。
私が以前勤務したスイスは、ドイツ系、フランス系、イタリア系等の住民からなりますが、世界の誰もが認める「スイス」という国の姿と国民の連帯を言語の壁を越えて形成しております。このような連帯なるものは、共に住み、情報と経験を共有し、そして国に対する歴史認識を分かち合った人々の間で育まれるものと信じます。そうだとすれば、日系社会でも非日系との結婚の比率が高まり、日本語離れなどにもかかわらず、今日の日系社会が作られてきた歴史認識を共有し、現在の日本の情報に接し、またお互いに出会う機会を積み重ねることによって、日本との精神的なつながりを深めることは可能ではないでしょうか。確かにこうしたつながりのために日本語の果たす役割は重要であり、その普及のために我々も引き続き全力を挙げる所存でありますが、日本語に加うるに、歴史認識、情報、経験を共有する道を探ることがこれからの日系社会の活性化の核になるのではないかと思います。
このため、日系社会には現在、若い世代から壮年に至るまで様々な団体が多数ありますが、相互に情報と経験の共有できるネットワークの形成が早急に必要です。総領事館としても可能な限りお手伝いさせて頂きたいと思います。
皆様の御健勝と日系社会の一層の御発展をお祈りし、新年が実り多い年となるよう願って私のご挨拶とさせていただきます。