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「奉仕の心」説く演劇=弓場農場2回公演 1200人を魅了=「クリスマス・キャロル」=4歳児から81歳まで出演

1月7日(火)

 去る十二月二十五日と三十日の二回、サンパウロ州ミランドポリス郡にある第一アリアンサの弓場農場(弓場哲彦場主)で、恒例となった音楽・バレエ・演劇〃三重奏〃のナタール公演が行われた。地元の郡内やサンパウロ州内各地からはもとより、近隣のマット・グロッソ州、パラナ州、リオデジャネイロ州、さらには遠く北米と日本からの、合わせて千二百人を越える観客を魅了した。
 主体となった演目は「クリスマス・キャロル」。十九世紀のヴィクトリア女王時代を代表する作家・チャールズ・ディッケンズの代表的な作品といわれているもの。それを農場の矢崎正勝さん(山梨県出身)が脚色して演出し、主人公のスクルージという、おカネを貯めることとだけを生き甲斐とするケチで頑固な金貸しのいじわる老人役を高山輝夫さん(東京農大卒、静岡県出身)が演じた。
 クリスマス・イヴに過去・現在・未来の幽霊たちがつぎつぎと枕元に現れ、頑固老人に悔いを諭す。クリスマスの朝、頑固老人は〃奉仕〃の心とその行動の大切さを悟り、生まれ変わった自分自身を発見した。人の心の奥底に存在し得る善悪の両面を、二時間におよぶ長帳場を通して巧みに演じた高山スクルージの熱演に「アカデミー賞に値する名演技だ。ブラボー、タ・カ・ヤ・マ-!」という歓声が静寂を破ってこだました。
 英国生まれの作品ながら、〃美しき日本人像〃を象徴するように脚色されたすばらしい演劇であった。この劇には三世の四歳児から一世の八十一歳の老人まで四十一人が出演した。
 弓場農場の十月~十二月は、ゴヤバやマンガ-などの収穫の最盛期で、一年中で最も農作業が忙しい時期だ。その合間をぬって練習を重ねてきた。舞台装置も衣装も全部手づくりだ。弓場の人々の意気込みは見事、というほかない。二〇〇二年の新作となった「ソーラン節」も、往年のマドンナ・小原明子さん(東京都出身)の振り付けと女性たちの手づくり衣装とともに、日本のあるべき姿を彷彿させるような躍動感いっぱいのバレエであった。
 感動的な演技や踊りと対象的だったのがつぎはぎだらけの劇場。一九六一年に建築された木造物なので、老朽化が進むのはやむを得ないが「何とかならないか。演技者に申し訳ないナ」と常連の観客からため息が多く聞かれた。