ホーム | 日系社会ニュース | 映画「ガイジン2」完成遅れる=制作費2000万円が不足=戦後50年祭委資金カンパへ=中沢会長「祖国が敬遠」と不満

映画「ガイジン2」完成遅れる=制作費2000万円が不足=戦後50年祭委資金カンパへ=中沢会長「祖国が敬遠」と不満

1月15日(水)

昨年三月から制作が続けられている、山崎チズカ監督の最新作「ガイジン2」の完成が大幅に遅れている。当初は今年春の劇場公開が見込まれたが、厳しい状況だ。理由は制作費の不足。関係者の話では最低でも二千万円にはなるという。
ブラジルに渡った日系移民三世代の人生模様を追いかけたこの作品。カンヌ映画祭で評価された前作「ガイジン」の続編として期待が寄せられるが、完成への道のりは想像以上に険しい。
ロンドリーナ市郊外に巨大セットを設置するなどして行ったブラジルでの撮影はほぼ終了。しかし、監督の祖父母の故郷久留米市や、富士山の映像収録が予定されている、日本でのロケ入りが資金難から思うように進んでいない。
処女作だった「ガイジン」を二十三年前に発表して以来、そのライフワークとして今作に取り組んできた監督。是が非でも完成にこぎつけたいところだが、悩みの種は尽きない。そんな監督のもとに届いたのが、「戦後移住五十周年記念祭実行委員会の新年会で講演してくれませんか」との依頼だった。
委員会は七日の定例会の席で、制作が難航する「ガイジン2」に対し、資金カンパを申し出る可能性を示唆。その代わりに、中沢宏一会長は「監督には作品で戦後移民のことを触れてほしいという意向を伝えた」、と明言している。
今は藁(わら)にもすがりたい監督。既に編集業務にも入っている段階で、新たに「戦後移民」の話題を挿入してくれという荒唐無稽にも、「NG」なし。三十日午後七時から、ニッケイパラセ・ホテルで予定される講演の申し出もすんなりと引き受けている。
中沢会長は「もちろん実際にどうなるかは不明だが、《戦後移民》という存在を知ってもらえただけでも」と手ごたえを語る。
監督は複雑な胸の内まで、中沢会長に吐露している。前作「ガイジン」は世界四十七ヶ国を巡るヒットとなったが、日本では単発的に公開されただけで、常時上映される機会を得なかった、と。

「採算が合わないというのがその訳だったらしいですが、悲しいことですよ、これは。自分のルーツの国から敬遠されたようで」
 中沢会長はそう不満を漏らす。昨年、戦後移住五十周年事業への協力依頼のため訪日。全国を行脚も、色よい返事が得られなかった身の上が重なるようだ。
 祖国の歴史教科書から、移民についての項目が消えるなど、疎外感を覚えつつあるのは移民も同じ。二千万円とも推定される不足予算のどれほどを日系社会で埋め合わせできるかー。映画公開予定の年が、「戦後移住五十周年」と重なった委員会としても、その行く末を無視できないといったところだろう。