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越境する日本文化 マンガ・アニメ(3)=パソコンとアニメの 怪しい関係=ネットの闇にうごめくオタクたち

1月23日(木)

 カタカタカタ――。目の前のモレーノ(褐色肌の人)がキーボートを叩く。「Dragon Ball」というキーワードを入れ、決定キーを押すと、パソコンのモニターには、ずらっとダウンロード(ネット上から自分のパソコンへコピーすること)可能な番組データが並んだ。数えると三百五十八個もある。
 これは世界中でインターネットに常時接続しているパソコン同士が、番組データをネット上で公開し、お互いにダウンロードしあうソフトだ。
 この〃オタク〃ブラジル人が、自慢のコレクションを持ってきた。ダウンロードしたアニメ番組をCDに焼いたもので、合計二百二十枚もある。三十分番組で五十メガていどだから、一枚のCDに十二回分入る。それが二百二十枚だから、二千六百四十回分のアニメ番組が入っている。
 どうやら日本国外において、最新アニメはパソコンで見るものらしい。無料・有料テレビによるアニメ放映とともに、ファン層の裾野を広げている最大の要因がインターネットだ。
 国内最大級のアニメ・マンガ関連本の在庫を誇る、リベルダーデ区のフォノマギ竹内書店店主・麻生譲二さん(四五)は事情通だ。「日本で放映されたアニメが一週間もたたずに、インターネット上に上げられ、世界各地のファンがダウンロードする時代です。それをCDに焼いたり、ビデオに落として鑑賞するファンが多い」と解説する。
 インターネット上のアニメ番組は重い(サイズが大きい)。ダウンロードするには、通常のダイアルアップでなく、「スピーディ」などのブロードバンド(高速回線)でなければ膨大な時間が必要になる。例えばアニメ番組一本分なら、ブロードバンドで数分から十数分でダウンロードできるが、通常回線なら数時間かかってしまう。高速回線が普及しはじめた二〇〇〇年ぐらいから、急速にパソコンで見るファンが増えた。
 「なかにはダウンロードしたアニメをビデオに落とし、一、二週間でポ語字幕をつけて貸し出す人もいます」と麻生さんは続ける。いわゆる海賊版だ。
 ネットの世界はそれ以上に無法地帯だ。「一昨年上映された『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)などは、映画館内で家庭用ビデオで隠し撮りしてインターネットにアップする人もいた。また勝手に中国語に吹き替えて置いてあるものまでありました」と麻生さんは説明する。
 最新のマンガをスキャナーで画像として取り込み、セリフをポ語に書きかえた上で、ダウンロードできるように置いてあるサイトもある。通称〃イスキャニレイション〃(ポ語「イスキャナー=スキャナーをとる」と英語「トランスレイション(翻訳)」の合成語)だ。サイズもアニメの五分の一から十分の一と小さい。その他、マンガのセリフ部分だけを文章ファイルにして置いているところもある。
 ネット上で情報交流拠点になっているのはアメリカの英語サイトだ。特にアニパイク(www. anipike. com)には日本の最新情報が満載されたサイトが、作品別などに数百もリンクされており、日本語が読めないブラジル人ファンや業界人ですらここを参照する。マンガ・アニメは世界につながっている。
    (深沢正雪記者)

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