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大垣市役所前でテント生活=慰謝料見直し訴える=デカセギのブラジル人=労災、半身不随に

1月28日(火)

 【ニッポ・ブラジル紙二十二日】二年前に労働災害で半身不随になったデカセギ男性は、医者の診察ミスでわずか五十八万円の労災保険慰謝料しかもらえず、時に氷点下になる岐阜県大垣市の役所前で数週間テント生活をおくりながら、慰謝料の見直しを訴えた。
 在日十一年になるジェズマール・ウェンドリング(三八)さんは、二年前の〇一年一月三十日午後九時ごろ、カーペット工場で働いている時に突然倒れてきた重量二百キロもあるカーペットのロールが頭にぶつかり、下半身に強い痛みを覚え、動けなくなった。
 それでも、チーフは「働け!」と命じたが、体が思うようにならず、途中退社した。普段ならアパートまで十五分の道のりだが、この時は二時間もかかった。治療費に使う借金を派遣会社に頼み、二日後、ようやく大垣市民病院へ診察にいった。
 医師の判断で最初から労災の認定がおり、労災保険が適応されたが、医師は単なるヘルニアと診断。その診察内容を聞いて、ウェンドリングさんは異議を唱えたため、逆に病院を追い出される結果になった。その医師はさらに精神鑑定が必要とし、仕事に戻る許可まで出した。
 「僕の足は二センチも縮んでしまった。歩くこともできないのに、どうして働けるの? 何か間違ってるよ」。ウェンデリングさんには日系妻のマユミさん(三三)、長女ユミ(一三)、長男ウィン(七)の家族があった。
 医師は労災保険を月々の医療費に適用することを止め、慰謝料として五十八万五千円が適当と判断していた。在名古屋ブラジル総領事館の手紙を手に、岐阜県労災保険事務所に交渉に行き、新しい障害診断をしてもらうことにした。診察結果、ウェンドリングさんは半身不随だったことが分かったが、障害度数は指を失ったのと同じ軽度にされていた。
 「こんな障害を負ってしまったのに、五十八万円ばかりもらったって…。残された僕の人生はどうなる」。今度は東京の労災保険事務所に行き、障害度認定の訂正を求めたが、事故から半年以内でないとできないと断られた。
 お金がないため、アパートの電気、水、ガスを止められ、数カ月を過ごした。ひどい時には二十五日間も食べることができなかった。最終的に派遣会社が一家をアパートから追い出したため、大垣市役所前にテントを張って窮状を訴えることに決めた。
 冷え込みのきつい野外キャンプ生活を数週間送り、今月十七日に元のアパートへ戻った。愛知県の弁護士は慰謝料五千万円も不可能ではないといっているそう。ウェンデリングさんに残された希望は裁判だけだ。