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川上事業団総裁ブラジルを初訪問=日系社会「協力」を強調=転換期迎え事業見直し

1月28日(火)

 二十日から協力事業の視察にブラジルを訪問していた国際協力事業団(JICA)の川上隆朗総裁が二十五日午後、サンパウロ市内のホテルで記者会見し、平成十二年度の移住審議会での見直しから、日系社会向け事業について、「支援」から「協力」へとシフトしている姿勢を改めて強調。今後は日語教育・福祉・人材育成の三事業を柱に力を注いでいく考えを示した。ルーラ政権との絡みでは、ブラジル農牧研究公社などを通じ実施している技術・人的協力を例に、「農業問題で飢餓撲滅を狙う現政府の姿勢と一致している」との見解を述べた。また、日本政府が過去五年間で政府開発援助(ODA)予算を二二%削減している一方、同事業団が今年十月から独立行政法人となることに関して、総裁は「中南米への予算配分は全体の十%前後だったが、これが事業全体の効率化を図る中でどうなるか」は不透明とし、経済の立て直しに苦しむ政府のODA戦略が転換期を迎えていることをここでも印象付けた。

 会見には川路賢一郎JICA中南米部長、小松そう玄同サンパウロ支所長、松谷広志同ブラジリア支所長らが同席した。
 視察はペルーを皮切りに、チリ、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジルと二週間にわたった。総裁はこれを振り返り、「就任して一年半でブラジルは初めてだったが、南米の日系社会の変遷を目の当たりにした」
 そのうえで、「すでに移住者は現地社会に定着しているとの判断から、『支援』から『協力』へとJICAの姿勢に変化はあるが、特に高齢化対策への協力は変わらず欠かせないだろう」との感想を述べた。
 二十五日、会見を前に特別養護老人ホームの「あけぼのホーム」を視察した総裁は「二月には開所式が行われるという。JICAの支援が立派な形となっていることをうれしく思う」と明かし、これからも日系社会の福祉事業に対しハード・ソフト両面で、力添えしていくことを約束した。
 また、ODAへの国民の目が厳しくなっていることについて触れ、「今年度予算も五・八%減となった。ODA戦略の見直しで、(二年後の)平成十七年度から移住融資事業も完全に廃止されることが決まった」。
 独立行政法人化するJICAの未来予想図に関しては、「政府に中期的計画を提出する必要が生まれるため、組織と事業の洗い直しが求められる」などと説明。紛争国の復興支援を掲げる「平和構築」と、国民参加による国際協力と位置付けられた「草の根技術協力」の二事業が目玉となると付け加え、強調した。
 「草の根―」では、同席した川路部長が「すでに海外日系人協会を通じて福祉関連の事業プロジェクトが六つほど上がってきている」と打ち明けた。続けて、「日系社会としてはこれを利用する場合、同協会からニーズを伝えてくれれば、もっとダイレクトに意向を反映できるのでは」とアドバイス。
 農業分野での協力についても、川路部長が南米各国の日系農業者を集めたセミナーを開催するなど「ネットワーク作り」への支援を打ち出している、とアピールした一方で、「移住事業に農業支援があったし今後も続けたいが、予算面で厳しいものがある。出来るだけ優先的なものを出してもらえれば」と注文を付けた。
 総裁はこれに関連し、首都ブラジリアを訪ねた際に、「改めて関係者から農業問題への支援の要請があった。ブラジルの新政府も貧困対策に熱心なので環境対策への協力とともにもっと力を入れていきたい」と締めくくった。
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【総裁のブラジルでのスケジュール】
二十一日午前、首都ブラジリアにブラジル農牧研究公社セラード研究所を訪問。午後からギマランエス・サムエル外務次官ら政府要人と会談した。二十二日、汎アマゾニア日伯協会、アマゾニア病院を訪問(ベレン)。二十三日はアマゾンへ、群馬の森と東部アマゾンセンターを視察した。サンパウロには二十四日に到着。サンパウロ州軍事警察を表敬訪問。ブラジル日本移民史料館、慰霊碑へも足を運んだ。