1月29日(水)
「仙腸関節は動く」――。指圧、整体師の中田定和さん(兵庫県出身、六七)が昨年十二月十五日、パシフィック・ウエスタン大学総合健康科学の東洋医学で博士号を取得した。同大学は学外学位を授与する専門大学。著書、「腰痛の決め手 和柔整体 実践と理論」を論文として、申請し、それが認められた。ブラジルから、東洋医学の博士号を取得したのは、初めてだとみられる。(仙骨は脊柱の土台となる骨。両寛骨が真中に仙骨を挟んで骨盤をつくる)。
中田さんは八七年、ブラジル東洋医学振興会(ANDEMO校)の鈴木朝冶元会長に師事、約二年間、整体、整骨を学んだ。ANDEMO校を卒業後、同校専任講師を経て、アクリマソン区に治療室を開設した。
九五年、リオ州立専門学校を卒業して、同州公認の指圧、整体師の資格を得た。翌年、ヴィラ・マリアーナ区に診療所「中田東洋医学」を新設した。
この後、大阪の青龍整体宗家で研修。鈴木式柔療法を発展させた和柔整体を確立した。
博士号取得の準備は九九年から。妻、みちよさん(六二)が同年、訪日、東京事務局より資料を持ち帰った。和柔整体について書いた二冊目の著書を英訳、論文に仕立てた。
てこずったのが、経歴書などの作成。地域活動への貢献といった様々な書類が必要とされたため。三年近くも時間を要した。
日々の生活の中で、志を忘れかけたことをもあった。妻の激励などもあり、昨年十月、ようやく必要書類を揃え、大学に提出。同年十二月、学位が授与された。
「自分一人では出来なかった。妻がいろいろと手伝ってくれた」と、内助の功を称える。
解剖学の教科書には、たいてい仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節は動かないと書いてある。でも、何らかの形で動くはず。骨盤が傾いていても、仙腸関節を調節して正位置に戻すことができるのだから。これが、持論。何十年も唱えてきた。
「アインシュタイン病院で手術を受けなければならないと宣告された患者が、ここに来て治った」。
大学が、中田さんの説を認めたということになる。
昨年、訪日、暮れに帰国したおり、大学から証書が届いていた。「まさか、ディプロマがくるとは思わなかった」と、顔をほころばす。
近く、講演会の開催も考えている。
著書に「鈴木式柔療法 実践と理論」がある。ブラジル将棋連盟会長。妻、みちよさんは日本語普及センター理事。
【和柔整体】柔のすじもみをマッサージの基本とし、骨格を通じて筋肉・靭帯の作用を利用して整骨を行い、人体を正しい位置に戻すと同時に、内臓の諸器官のもつ機能を正常に働かせるという意味を持っている。「腰痛の決め手 和柔整体 実践と理論」より。