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越境する日本文化 マンガ・アニメ(8)=マニアックな読者たち=マンガ通して 日本の風俗へ親しみ

1月30日(木)

 USPでマンガ史を教えるソニア・ルイテン教授は「ブラジル人のコミュニケーション手段の中心は、文章ではなく目(ヴィジュアル)と耳(会話)。その分、敏感に反応する」とし、それゆえマンガやアニメに飛びつきやすいと分析する。
 「マンガはヴィジュアルに訴えるから、本を読むよりはるかにラク。動きのあるアニメの場合、主人公の性格に多少なじまなくても、強烈な表現手法と、実生活に近い内容があいまって人気を博しているのでは」
 アニメやマンガの基本は娯楽であり、学習的イメージが伴う読書と違って、気軽に手に取れる。
 マンガ出版のConrad社の編集者シジニィ・グスマンさんは「当社発行の『バガボンド』(宮本武蔵のマンガ版)を読んで関心を持った読者が、後から翻訳本『Musashi』を読むという現象が起きています」と説明する。水は必ずしも、低いほうへ流れるばかりではないようだ。
 熱心なファンになると日本語でマンガを読みたいから、アニメ主人公のセリフを直接理解したいから、と日本語の勉強をはじめる。
 毎週三十人が通う日本語講座も併設するアニマンガ社の永田翼さんは「八割以上は非日系です。目標が明快だから、覚えるのが早い。親からやらされてくる子はいないし、しつけや伝統的日本文化からも自由に勉強してます」と説明する。
 フォノマギ竹内書店の麻生譲二さんは「マンガを購入する層は、ただアニメを見ているだけの人より、さらにマニアックな層です。いつも新しいマンガを購入したがるし、日本で発売されたばかりの最新のものを注文してきます。ひらがな、カタカナ程度の人が大半のようですが、絵を見ているだけでも楽しいし、ストーリーを理解するには問題ないようです」
 また、Conrad社のカシウス・メダウアル編集コーディネーターは「〃できるだけ原本に忠実にしてほしい〃という読者からの注文は大変多い」という。
 「アメリカで発売されるマンガは、西洋社会の慣習に合わせて通常左から右に開くように、版下を左右逆にして作る。でも、我々が発行するマンガは通常、日本式に右から左にめくる。西洋式に表紙を開くと「止まれ! 間違った側から読みはじめてます」と注意書きを入れています。それは読者の要求です」
 逆焼きにした場合、全ての登場人物は左利きになってしまい、一見して奇妙な図柄になる。
 同様に、マンガ表現の中で、擬音語・擬態語は絵と一体になっているので、「ギャー」「ヒューン」とかが左右逆になり、カタカナ、ひらがなを読める人にはやはり不自然な表現になる。アメリカではわざわざ擬態語・擬音語を原画から削除し、代わりに英語のそれを入れ直す工夫までする。
 メダウアルさんは「『ドクター・スランプ』で、日本で刊行された当時には爆発的な人気があったが、現在はすでに存在しない二人組の歌手にちなんだ登場人物が登場する。訳者の発案で『サンディとジュニオール』(ブラジルで有名な姉弟歌手グループ)に、名前を置きかえたら、読者からどっと批判の手紙が届いた。〃日本のマンガなのにどうして!〃というものでした」と回想する。
 「できるだけ原本に忠実にして、その分、訳注をたくさんいれています」と苦労の一端を語る。
 「コンビニ」「おにぎり」「牛丼」…。例えカタカナやひらがなしか読めなくても、マンガを通して、現代日本の様々な風俗習慣が、ブラジルに流れ込んでいる。(深沢正雪記者)

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