2月12日(水)
野沢菜を普及するため、昨年五月に来伯した元移住者の依田道雄さん(七一、長野県出身)が、出稼ぎ子弟の支援に乗り出した。年金生活者となった日系移住者たちを日本に派遣、子供たちの学習をサポートするという構想で、群馬県邑楽郡大泉町など、ブラジル人が多く居住する自治体に協力を要請する旨の陳情書を送った。
依田さんは長野県内に別荘を所有している。群馬県内で働く息子が同僚や部下のブラジル人を誘って、ちょくちょく休日を過ごしにくる。世間話をするうちに、多くが子供の教育問題に悩んでいることを知った。
将来は、ブラジルに帰国する予定だが、ポルトガル語を忘れて、十分に話せない。日本語能力も足りず、日本の学校で授業についていくのに悪戦苦闘している。
依田さんが日本に引き揚げた際、おしゃべりだった三人の子供たちは、数カ月足らずで、ポルトガル語を忘れ、無口となった。出稼ぎの気持ちが痛いほど、胸にしみた。
ブラジル将棋連盟のサロンで将棋や囲碁を指す年金生活者を見て、とっさに思いついた。「これ、いけるんじゃないか」。
時間に余裕のあるお年寄りたちを日本に派遣して、ボランティアで授業の予習、復習をみる。自治体が資金を援助、住居、滞在費などを賄う。
「県や市町村によっては、専門の相談員を設置しているところもある。だが、まだまだ、足りない。コロニアに生かせる人材がいる」。
既に、数ヶ所の自治体に陳情書を発送、返事を待つ。
依田さんは、「定年後、ぶらぶらしている老人にとっても生きがいになる。さらに、母国を訪問できたら、移住者も喜ぶはず」と、話している。