2月12日(水)
つづいて第二の視察地は、モジ・ダス・クルーゼス市の田中農場。対応してくれた田中アルマンドさん(二世、三九)はポ語で要領よく説明する。パラグアイ、アルゼンチン組は所々分からないところがあるらしく、ブラジル組に尋ねて熱心に確認していた。
大手スーパーチェーンのポン・デ・アスーカルやカフェフォール向けに「小パック野菜」(ブランド名Da Raca)を毎日五、六千パックも出荷している。極めつけは、開けたらそのまま食べられる洗浄済みサラダ菜パック。切り口が黒くならないように、オゾンで殺菌した水で切った葉野菜を洗い、袋に詰めて、窒素を封入するので四、五日持つ。農家というよりは、まるで食品加工工場――。
大手スーパーの商法は殿様だ。値段は全てスーパー側が指定し、田中さんがトラックでサンパウロはおろかリオの店まで配達し、売れ残りは返品となる。当然売れた分しか払わない。コントラット(契約書)ではなく、アコルド・コメルシアル(承認)という契約を五十日ごとに繰り返す。
百六十人を雇って、五十ヘクタールの農場(うちハウス三ヘクタール)を耕す。それでも「生産が間に合わず、他から買ってきて補充することもしばしば」という。
視察参加者から「今みたいに雨続きだと、値段があがって儲かるでしょ?」と質問が飛ぶが、「店頭価格が上がれば数が売れなくなるし、今はドルが高いからコストが余計かかってそれほど儲からない。一番儲かるのは値段が中ぐらいでいい天気が続く時」とのこと。
バスに乗り込むや、「あんな大変な商売は俺にはできんな」というため息交じりの声が聞こえた。
三十日最後の視察地はアルジャー。まずは二〇〇〇年に創立したばかりのサンパウロ花卉組合が建設しているSP-Flor花市場を見学。まだ全体の四分の一程度(四千平米)というが相当広い。理事長・荒木克弥さんの将来展望にあふれるアラキ節を一同じっくり拝聴。
その後、荒木さんの花卉農園へ向かう。かつて菊の生産量でブラジル一を十年間続けたというだけあって、ハウスの面積は〃五町歩〃(五ヘクタール)もある。年間二十種類を百五十万鉢も出荷するという。ただ単に広いだけでなく、棚の下にお湯を通したパイプを回して暖房したり、冷房付きの部屋や電照室を作って出荷時期をずらしたりと、あの手この手の工夫が随所に見られる。
急に激しさを増した雨にも関わらず、大半の参加者は傘もささずに熱心にあちらこちらを見てまわる。「いや~、初日から横綱見せられちゃったな」と感歎する者数人。
夜七時にホテルへチェックイン。三十分後に待ち合わせて、ちかくのシュラスカリア・コステランへ行き、ピッカーニャとメダリョンに舌鼓を打つ。アルゼンチンからの参加者は「ブラジルの牛肉はうまくなった。日本で食べたオーストラリア産のより、はるかに肉の味がする」と感想を漏らしった。 (深沢正雪記者)
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