2月14日(金)
【ヴェージャ誌一七八九号】PT(労働者党)の名誉総裁であるルイス・イナッシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ氏が新大統領に就任し一カ月半。野党はまったく新政府の批判をせず、大人しくしているが、逆にPT内の過激派との間で不協和音が流れ出している。
過激派は新政府に対し、「大々的なムダンサ(革命、改革)が必要」と叫んでいる。現在PT過激派グループは、国会議員(下院議員九十二人と上院議員十四人)の三分の一を占めている。また党員の三分の一が過激派主義者だとされる。
過激派の主張事項は十項目にまとめることができる。ヴェージャ誌は、「PT過激派の十戒」として紹介している。十戒は次の通り。
一、外債を払わない。二、IMF(国際通貨基金)との協定を破棄する。三、FTAA(米州自由貿易圏)とメルコスルに加入しない。四、民営化された国営企業を再び国営化する。五、民間企業を国営化する。六、財政法を無効にする。七、民間企業などの利益分を外国へ送金することを全面禁止し、国への資本の出入りをコントロールする。八、金融システムをコントロールする。九、マスコミをコントロールする。十、土地の所有権法を見直す。
PT過激派の多くが、ルーラ新政権の発足を、「社会主義のブラジル」という長年の夢が実現する最大のチャンスだと期待していた。だが新政権は、元ボストン銀行総裁のエンリッケ・メイレーレス氏を中央銀行総裁に迎えた。過激派は、「政府は国際銀行グループに土下座したのか!」と激怒した。
PT過激派とされるエロイーザ・エレーナ上院議員が、メイレーレス氏就任に猛反対したことがきっかけで、多くの過激派国会議員も声を上げた。
インフレをコントロールするために、通貨審議会は金利を引き上げた。過激派はすぐ、「ルーラ氏は投機家の言いなりになったか!」と罵声を飛ばした。
だが、過激派が最も〃敵視〃しているのはアントニオ・パロッチ蔵相だ。歳費削減や財政法の維持、IMF協定で約束されている債務の支払いの遂行など、ルーラ氏の選挙運動中の公約を並べている。
状況はどんどんエスカレートしていき、パロッチ蔵相は過激派と秘密会談をするはめになった。過激派は、同相が秘密会談中に過激派と同じようなスピーチをするのではないかと考え、盗聴機器を仕組んだ。
だが蔵相は意見を変えることはなく、盗聴テープがマスコミに発表されたことで、「公約を守る大臣」と、過激派の意図とは裏腹に高評価を得る結果となった。「公約は当選のためのウソだと考えていた過激派は見当違いだったというわけだ」と、パロッチ蔵相は語る。
一九九五年以来、ルーラ氏とジョゼ・ジルセウPT総裁の努力によって、過激派はPT党内でのスペースを失いつつある。すでに過激派議員の処罰を訴える声も、政府側から上がっている。
PT政府は、過激派が政府の方針を批判することは予想していたが、「まさかこんなに早くとは」と困惑も見せている。ルーラ政権では、野党は政府を全く批判せず、PT過激派だけが非難の声を上げると推測するのはまだ早い。上下両院国会に政府側の議長(上院は経験豊かなサルネイ氏)が就任した今、政府の本格的な政治が始まるのはこれからだろう。