2月25日(火)
★審査員はつらいよ★
「審査員をしている時は、トイレに行く時も誰かがついてこないとダメ。どっかで不正をするんじゃないかっていう配慮です。厳しいですよ、なかなか」。日系では数少ないパレードの審査員をする小川彰夫さん(会社経営、二世)はいう。
十種類の審査項目があり、十点満点で採点される。グルッポ・エスペシャル(一部リーグ)の場合は各審査項目に三人の審査委員がいるので、合計三百点満点になるが、二部リーグなどの下部グループには一人づつしかいないので百点満点だ。
審査員になるには、ウニオン・ダス・エスコーラス・デ・サンバ・パウリスターナス(サンパウロ州サンバ学校ユニオン)が実施する講座を受講しなくてはならない。週三回三時間づつの授業が一カ月半も続く。でも、いきなりグルッポ・エスペシャルの審査ができるわけではない。最初は地方の下部リーグの審査経験を何回か積まないと、その権利がもらえない。
「当日まで、自分がどこの町で審査するのか教えてくれないし、その間は携帯も使用禁止です」。朝九時に所定の場所に集まって、そこで始めて教えられ、同じ町で審査する十人と一緒にマイクロバスで出発する。
小川さん以外はほとんど黒人で「日本人にサンバが分かるの? 審査できる?と面白がられた」そう。
「十点の時はいいけど、良くない点数やる時はしんどい。だって理由を書かなきゃいけないから。後でみんなが見るでしょ、それ。変なこと書いてあるとか思われたら大変!」
また「いっぺんでるとカルナヴァルの味が違う。外から見るのとは大違い」と力説する。小川さんがカルナヴァルに参加したきっかけは、親戚がパレードに参加するから一緒に、と誘われたこと。八六年のサントスを皮切りに、サンパウロやリオのグルッポ・エスペシャルに十回以上も参加している。うち〇一年にはヴァイ・ヴァイのバテリア(打楽器隊)にまでやった。
★二世は大人すぎ?★
「オオッ、ネゴン!とかプレットとかいって呼びかけるでしょ、バテリアの人たち同士は。あれは普通の場所では絶対に言えないよね。黒人差別用語だから」と驚いた様子。「あれだけ厳しい練習を、たった一日のためにする。しかも毎年」という。そこで「審査員も向いてるかもしれないから、やってみたら」と言われたのが、勉強をはじめたきっかけだった。
「僕たち二世がサンバ嫌いということはじゃなく、機会がなかった。誰かに誘われないと、ちょっと入りにくいかな。それに二世、三世はどこか大人になりすぎているところがある。バカバカしいと参加しない。二世は昼間働いて夜学する人が多いから、音楽や芸術とかに割く時間は少なかったからね」
小川さんは〃これからは遊びが大切な時代〃と考えている。「小さな幸せをいろいろ集めることが良い人生につながる」という。「日系も四世ぐらいになったら、ブラジル式の遊び方をおぼえるんじゃないかな」と豪快に笑った。
(深沢正雪記者)
■カルナヴァルと日系人(1)=「ボヘミアンな父でした」=日系初のサンビスタは戦前移民
■カルナヴァルと日系人(2)=見ると出るでは大違い=「日本人にサンバが分かるの?」
■カルナヴァルと日系人(3)=日系初のカルナヴァレスコ=ヴァイ・ヴァイで2度優勝
■カルナヴァルと日系人(4)=サンバ魂は三世から!?=両親大反対だった大衆音楽研究
■カルナヴァルと日系人(5)=バロッカ・ゾーナ・スル=日本人にもできる=『移民75周年』で仲間入り
■カルナヴァルと日系人(6)=フロール・ダ・ペーニャ=囃子響かせ笠戸丸行進=「リオで大江山の鬼行列」と構想
■カルナヴァルと日系人(終)=ヴァイ・ヴァイ=移民90年忍者と芸者とラジオ体操=日本民族文化からブラジル民俗へ
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