2月25日(火)
「もはや流行ではない」―。十六、七日の両日、国際交流基金サンパウロ日本文化センターでサンパウロの日本食事情について講演した料理評論家でジャーナリストのアルナルド・ロレンソさんはこう宣言。市民の間で「すしよりもピッツア」という時代は終わりを告げ、サンパウロっ子はフランスやイタリア料理の要素を取りいれながら、進化を続ける日本食に大きな関心を払っている、などと指摘した。
すしや刺身が一般に普及するまでの流れを”つかもう”とする意図からか、講演は「お箸の先」と題された。
アルナルドさんは始めに「サンパウロ州の田舎育ちである」ことを告白。「近所に住んでいた日本人のおじいちゃん、おばあちゃんから、おみそ汁や羊かんの味を覚えた」と続けた。
日系移民の生活史に触れつつ、リベルダーデ街の遍歴や、それぞれの時代を飾った日本食レストランを紹介。特に「駒寿司」、「すし清」から得た経験を熱っぽく語った。
また、料亭「青柳」で撮影されたブラジル映画のワン・シーンを上映。出演者たちが「生魚は苦手」、「やっぱりピッツアを食べに行こう」などと会話する姿に、かつての日本食に対する態度がよく現れている、と例示した。
日本食が人気を獲得したきっかけは「八〇年代、勝者の国・日本の食べ物としてマーケティングに乗ったことが大きい」と分析。見た目の美しさや、健康に良いとする認識などが重なって、現在の「定着」に至った、と結んだ。
講演二日目は、日欧料理の融合に取り組む若手の調理人たちを取り上げた。いずれも人気レストランのコックばかりでスライド写真で紹介された料理には一堂ゴクリ。ここでは、しょう油とオリーブ、バルサミコとてりやきソースで味わう日本食の可能性が示された。
アルナルドさんが太鼓判押す日本食レストランは「ジュン・サカモト」のようで、「駒寿司」にいた経験を持つ職人が握るマグロは一キロで百五十ドルの代物、と明かされると、周囲からため息が漏れた。