エイズウイルス(HIV)はやはり怖い。この現代の死病が発見されたのはニューヨークであり一九八一年であった。当初は治療薬も簡単に開発されるだろうの楽観論が支配的ながら未だに完璧な薬剤はない。以後、ほぼ二千万人の患者が死亡し昨年度の感染者と患者数は四千万人と聞けば、この病気の猛威をきちんと知るべきだ▼しかも、エイズの病魔はサハラ以南のアフリカなどに浸透しはじめ悲惨な地獄図を描いている。一昨年の統計だと、HIVの新感染者は世界で五百万人。死者は約三百万人にも達している。こんな恐怖の病なのに日本人の対応の仕方には首を傾げざるをえない。感染者や患者の数から見れば、列島は確かにエイズ小国ではある。が、徐々に増えているの現実にも目を向ける必要がある▼もっといけないのは、国民の多数がHIVに対して無関心な向きが多いことだろう。好例を妊婦の抗体検査への取り組み姿勢に見る。この病気は母が子を出産するときに感染する比率が高い。ところが母子感染の九〇%以上が妊娠中の抗体検査を受けていなく、予防策も取っていなかった。さらに良くないのは、各県によって検査の実施率に雲泥の差があることだ▼山梨県は一〇〇%の実施ながら最も低い佐賀県だと〇・一%に過ぎない。この地域差を解消すべきは論を待つまい。例え結果が陽性でも抗ウイルス薬で予防は可能だし感染は二%程度に抑えられる。ここは─HIV感染の全妊婦に検査をが筋だろう。 (遯)
03/03/06