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コラム 樹海


 ショッピング・センターのレストラン集中階にある寿司屋をのぞく。この天候不順、暑さのせいか、タネが少ない。サーモン(養殖鮭)が主役みたいに幅を利かしている。いくらブラジル人が好むといってもサーモンが中心では困るのに(本来握りではあまり使われなかった、という意味で)▼確かに、巻き寿司やちらし寿司は別にして、ブラジルの夏季は寿司の敵だ。暑いから、すぐ鮮度が落ちやすい。冷凍技術が発達したとはいえ、鮮魚のようにはいかない。タネがないから、しばらく休業します、と寿司屋が臨時閉店すれば、商売上がったりになるだろう。そういう職人気質の店は当節流行るまい▼ただ、ショッピングに出掛ける、客のマイオリアを占めるブラジル人に、寿司とはこういうものだ、と思わせてしまうとすれば残念である▼本来は江戸前のようでなければならないのだ。海が汚染されていなかった昔、江戸湾でとれた多種の魚がそのまま寿司ダネになった。冷凍庫、冷蔵庫やイゾポルの箱にいれて鮮度が落ちるのを防ぐ、などということはなかった。これを江戸前といった▼日本では、いまも、スーパーの食品売り場にいくと「お客さん、その魚は刺し身にならないよ」と店側が指示?を出してくれる。寿司屋はもっときびしい。商売人の良心だ▼ここはブラジルだ。比較はできない。サーモンとマグロぐらいしかタネらしいタネがなくなっても、ほかの鮮度が落ちた魚を加えないのを良しとしておくか。
(神)

03/03/07