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「和牛もっと普及しよう」=日系中心に、と生産者協会=ブラジル国内で 80年代から人工授精の試み=「WAGYU」登録ずみ

3月8日(土)

 世界第二位の肉牛生産国、ブラジル。国内の頭数は二〇〇〇年時点で約一億六千万頭に上る。ただしその九割以上はコブのあるネローレ種。そのブラジルで日本の和牛を広めようとする人たちがいる。普及を進めるのは「ブラジル和牛生産者協会」。飯崎貞雄会長に話を聞いた。
 ブラジル国内での和牛生産の試みは四十年近くさかのぼる。三十七年前に一対の雌雄で自然交配を行なった。この時は牛が死亡したため失敗、その後は途絶していた。八〇年代に入ると人工授精による和牛生産の試みが始まる。
米国やカナダ、オーストラリアでは早くから和牛の生体が持ち込まれ、生産が進められてきた。ブラジルと日本の間には協定がないため、生体輸入は認められていない。そのため九〇年、ヤクルト商工がアメリカから和牛を持ち込み、精液の販売事業を開始した。隣国パラグアイのイグアスー移住地では昨年、現地の日系牧場が純粋和牛の生産に成功している。
 ブラジル和牛生産者協会が設立されたのは九五年。現在、サンパウロ州内を中心に十カ所の牧場が加入している。そのうち六つは日系の牧場だ。すでに一部の牧場からサンパウロ市の日本食レストランへの出荷が始まっている。しかし、連続して市場に供給するにはまだ十分ではないようだ。
 輸出牛肉の多様化を図るブラジル農務省も国内での和牛飼育を支援。和牛種の登録も済ませ、協会は二〇〇一年に同省から団体としての認可を受けた。
 同協会の理事を務める小副川勝利さんは現在六十歳。自ら牧場を経営する小副川さんは、昨年十月に事業団の畜産研修で訪日。北海道で三カ月間、和牛の飼育や衛生、流通に関する研修を受けて来た。小副川さんは「最初は日系を中心に普及していきたい。五頭、十頭からでもいい。日本の牛は日系人が中心となって保つべきだと思います」と語る。
 協会では今後、精子や受精卵の販売、飼育の指導などを通してブラジル国内での和牛普及を図る考えだ。当面はネローレ種と和牛の交配種が中心。現在はアフトーザ(口蹄疫)検査の関係で認められていないが、この問題が解決すれば将来的には日本、アメリカへの輸出も可能になるという。日本では一万ドル単位の値がつく和牛も、ブラジル国内で生産することで大幅なコストダウンが期待される。
 和牛の飼育期間は約三年。飯崎会長は「三年後を目指し、まずは普及を進めていきたい。興味のある方は是非協会まで問い合わせてほしい」と呼びかける。
 ブラジル産の和牛「WAGYU」ブランドが日本の食卓に上る日は来るのか。関係者の期待は大きい。
 【ブラジル和牛生産者協会】事務局(011)4481・8800、電子メールは wagyu@uol.com.br