3月11日(火)
藤井香織さんたち四人によるフルート・アンサンブル公演が八日午後四時から、サンパウロ市内のマクソードプラザ・ホテル劇場で開かれた。四百二十席の会場がほぼ満席となった。
開会と同時に、今回の南米ツアーのために作曲された『序曲』が威勢よく演奏された。フルートの清澄な音色を期待していた人は裏切られ、南米の陽気なカルナヴァルのようなカラフルな音色が会場に踊った。続いてビゼーの『カルメン』からハバネラが演奏され、フルートの音を満喫させた。 四曲目の『アメリカン・スイート』は香織さんのフルート技術がいかんなく発揮された。二節目の『鳥と峡谷』はグランド・キャニオンに吹き付ける強風をフルートで表現、砂が岩肌に当たる様子は姉の藤井裕子さんがピアノ線を引っ掻くことで表した。ニューヨークの朝の胎動、せわしさは、舌をぶるぶる震わせるトリル奏法で伝えられた。
二部に入って沖縄の歌『花』の演奏が終わるころになると、香織さんは、「私もだんだんいい気分になってきました」と自らのフルートの音に酔うように楽しく演奏していた。割れるような拍手でアンコールにこたえ、演奏会は終わった。