3月13日(木)
今なぜ日伯学園なのか。日系コミュニティとして学校を建設する理由はどこにあるのか。日伯学園構想をめぐる歴史的経緯と将来目指すべき建学の理念について、報告書の内容を紹介してきた。
では、実際の日伯学園はどのような学校なのだろうか。検討委は具体的な学校モデルとして「小中高校案」と「大学案」の二つの案を提出している。
【小中高校案】
「小中高校案」では学園を幼稚部からはじめて、徐々に高校まで増設していく。「語学の習得や多文化教育を実施するには性格形成期における指導が欠かせない」というのがその理由だ。既存の日系ブラジル校や他国コミュニティ系の学校の多くがこの方法で創立されている。
従来の学園構想も、この「小中高校案」を前提として議論されてきたが、日本文化、精神の教育を通じた日系民族の後継者育成に比重を置いていた。
報告書は「ブラジル社会への日本文化普及」を重視する原則から、「性格形成期における指導」を評価しつつも、「何を〝日本的な良さ〟とするかは、実際に日伯学園を運営していく二、三世有識者層に判断を委ねるのが現実的」とも述べている。
同案では二〇〇八年までの創立を予定。幼稚部から高等部まで九百人規模の学校を想定している。創立十五年をめどに、市内有名私立校に比肩させることを目指すとしている。
【大学案】
今回の構想で新たに打ち出されたのが「大学案」だ。専門性に重点を置いた大学を建設し、ここと既存の日語学校、日系ブラジル校が連携することで、小学校から大学までの一貫教育を目指すという考えだ。
サンパウロ市には既に多くの日系ブラジル校が誕生している。全伯各地に日本語学校がある。同案ではこれらの学校とネットワークを形成することで、相互に補完し合う関係を構築できるとし、さらに、地域密着型の小中高校案よりも構想に対する全伯的な合意を得やすいとも述べている。
大学案では人格形成よりも、語学、文化、精神などに関する高度な知識の普及を図る。日本語や日本文化に興味をもつ学生を対象とすることで「日本文化への理解の深いブラジル人を育てる」ことを目指す。
その一方で技術者の育成にも重点を置いている。日本をはじめ各国の先端産業との連携を進め、国際的に通用する専門技術者を育成していく。大学には日本文化センターを設置して日本文化の普及を進める。
同案では二〇〇八年までに工学部の創立を予定。以後三十年をかけて各学部を増設し、将来的には南米における日本文化の交流拠点となる総合大学を目指すとしている。 (つづく)
■日伯学園構想に関する報告と提言(1)=一世世代最後の貢献=百年後に残る構想を
■日伯学園構想に関する報告と提言(2)=日系の〝根〟問い直し=多文化共生国家 新文化形成へ貢献