3月14日(金)
【日伯学園ネットワーク】
今回の報告書で、検討委員会は「日伯学園教育支援センター(仮称)」の創設を提言した。この組織は日伯学園と全伯の日本語学校、地方文協を結ぶ、いわば〝日伯学園ネットワーク〟の中核的な独立機関と位置付けられている。
その機能は大きく二つに分かれる。その一つが、全伯の日本語学校への支援だ。
日伯学園とは何か。簡単に言ってしまえば「ブラジル公認カリキュラムの中で日本語と日本文化を教える学校」である。全伯各地にある約四百の日本語学校。同センターはそれらの学校がブラジル公認校化する際に助言や教材提供などの支援を行なう役割を持つ。
この組織を日伯学園本体にさきがけて創設し、ネットワーク作りやバイリンガル教育に関する調査活動を始める。報告書はこの組織を全伯日系教育機関のネットワークの要ととらえている。
同センターのもう一つの機能が、デカセギ帰国子弟への対応だ。
日本で日本語と日本文化を吸収してきた子供たちは、その経験ゆえに、帰国後ブラジル社会への適応に苦しむケースが多い。この組織が、教育機関や日伯双方の関係団体との連携を通して、二つの文化を身につけた子供たちの社会適応を手助けしていく。
これらの調査や活動を通じて人材を育成し、教育方法を確立する。「この支援センターの調査研究や試行錯誤の実践の場として、日伯学園は機能しなければならない」、報告書はそう強調している。
【今後の課題】
検討委は、四月に改選される文協新執行部に対して、今後望まれる作業日程を次のように述べている。
そこでは、有識者による〝準備〟委員会を早急に設置して議論を深めることや、関係団体への説明、百周年記念事業への選定に向けた働きかけを行なうこと、文協主催の日伯学園シンポジウムを開催することなどを提言している。合わせて、学園建設に必要な調査を今後継続して行なっていくことも求めている。
報告書は結びにこう記す。「『小中高校案』『大学案』いずれのプランにしても、非日系の有識者も含めた二、三、四世層の意見を十二分に反映した教育内容とモデルを伴わなくては、創立しても維持することは不可能と思われる」。
この提言書をもって、検討委員会の役目はひとまず終わった。日伯学園構想が今後どのような道をたどっていくのか。それはこれからの議論を待つしかない。
(終)
◎ ◎
検討委員会はこの報告書を日ポ両語で四千部作成した。今後、全伯四百五十の地方文協をはじめとする国内の日系団体、日本の関係機関などに送付して議論を促していく考えだ。
■日伯学園構想に関する報告と提言(1)=一世世代最後の貢献=百年後に残る構想を
■日伯学園構想に関する報告と提言(2)=日系の〝根〟問い直し=多文化共生国家 新文化形成へ貢献