3月19日(水)
リマ市のヘスス・マリア区にある日系人協会に隣接して建っている日秘総合診療所(牧野ロベルト所長)は日本移民八十周年記念事業の一環として、計画、建設され、八一年に完成した。
以来、数度にわたる拡張工事を行い、現在では四階建ての延べ床面積一五五四平方メートルを誇る日系総合診療所である。
施設内には薬局やメガネレンズの販売所も完備し、地方の日系人学校への定期検診、地方日系社会への巡回診療や医療セミナー、シンポジウムなども頻繁に行われている。
国際協力事業団(JICA)は八二年から数度にわたり、同診療所に手術室やリハビリ施設に使われる医療機材やX線装置、CTスキャンなどの医療関係の設備援助を行っている。
良心的な診療代ときめ細かいサービスで九割以上の来診者がペルー人だが、七十歳以上の一世には無料診断を行っている。
二十七の専門分野に分かれた医師が約百二十人、その約半数が日系人だ。開所時は二十人の来診者しかなかったが、十年後の九一年には五百人を超え、現在では毎日千人以上がこの診療所を訪れる。
「この診療所の人気は凄いですよ。朝八時に来たら、病院を取り巻くように行列が出来ているんだから」と話すのは現在、日系第三国専門家として同診療所に派遣されている山中アデマール・州立カンピーナス大学教授である。
現在、同大学の消化器診断・研究センターに勤務しており、過去には、「内視鏡及び超音波」をテーマに千葉大学で三年間、研修した経験もあるエキスパートである。
今回の派遣で山中教授は『超音波ドプラ』と呼ばれる検査機を用いた診断についての指導を主に行っている。
山中教授によれば「ペルーであまり普及していない超音波方式の診察で内臓系の癌が容易に発見できる」と説明する。
山中教授の指摘によればペルーには肝臓癌が少なく、これは肝臓癌の前段階ともいえる肝炎、肝硬変のウィルスがまだ極端に少ないからだという。
またウィルスが発症するまでには十年以上かかるため、肝臓癌はペルーにおいてこれから深刻化する病気ともいえ、「十年後には肝臓癌が急増する」と山中教授は予測している。 「しかし、現在の段階で超音波ドプラでの診療スタイルを浸透させていけばタイミング的には非常に効果的」と説明する。
カウンターパートのボニージャさんは「ペルーでも超音波を使っての検査は認知されつつあるが、高価な機材のため、使う機会は少ない」とその状況を説明する。
山中教授は週に二日、午後八時から、専門分野に関しての講義も行っている。
「他の病院などからも参加者があって、前回は約五十人の出席者がありました」とその盛況振りを話し、「ペルーの医師たちは非常に熱心な勉強家が多い」と評価する。
山中教授が属するカンピーナス大学の消化器病診断センターでは五年前からJICAの協力により、毎年各国から十二人の医師や学生を招聘し、シンポジウムを開催している。
「各国の医師同士の連携は国レベルの医療技術アップのため、非常に重要」と認識する山中教授は、「ペルーで知り合った医師たちに私たちがブラジルで行っている研究などをぜひ見にきて欲しいですね」と話していた。
(堀江剛史記者)
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