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日系第三国専門家派遣事業 ペルーの現場を視察=終=評価高いブラジル専門家=それぞれの分野で貢献

3月20日(木)

 日秘総合診療所は今年度、ブラジルから四人の第三国専門家の派遣を受け入れている。
牧野ロベルト所長は、今までブラジルから派遣された専門家を高く評価し、「同診療所の医師たちの良い刺激になっている」とその影響を説明する。
続けて、「免疫細胞学の分野で吉井セルジオさんが指導した最新の技術は、レベルが高く、とてもインパクトがあった」と話し、吉井さんの派遣三カ月後、日秘総合診療所はその技術内容を「ペルー病理学会で発表した」という。
 高野ホアン同学会会長(元日秘医師会会長)は、第三国専門家の派遣について、「当初は安全面などでの不安もあったが、こう優秀な人材がくるとあっては、心配も吹き飛ぶね」と笑顔を見せる。
 他の医師たちも日系専門家の派遣について「コミュニケーション上の問題も少なく非常に効率的」と話し、「近隣諸国の医師同士の個人的つながりにもつながっている」とそのグローバリゼーション効果も指摘する。
     ◇
今年二月中旬まで同診療所に派遣されていた斉藤サンパウロ大学歯学部助教授は、JICAの援助で同診療所が導入した最新X線機器を使用する人材の育成と予防歯科の指導でペルーに派遣された。
 このX線機器で「虫歯の早期発見や矯正治療、歯周病、口内癌の診断、治療までが可能」と斉藤助教授は説明する。
 斉藤助教授の指導を受けたイルマ・アクーニャ技師は現在同機器で行う診療に追われている。
「でも、予防に勝る治療はありません」と強調する斉藤助教授が特に力を入れたのは予防治療。
週二回の講義を担当し、リマから六十キロ離れたワラルのさくら診療所でも出張講義を開くなど、と広範囲にわたった活動を行った。
 斉藤助教授は「非常に働きやすい環境で雰囲気も良かった」と同診療所の感想を話し、「機会があれば、もう一度同診療所を訪れ、アフターケアを行いたい」と話していた。
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現在、日系人協会は看護専門学校の設立計画を進めている。同校の教育カリキュラム作成のためにペルーに派遣されているのは現在、バロン・デ・マウアー大学センターで学校経営コンサルタントに携わる森谷ときこ教授。
リベイロンプレット総合大学で三十年間、看護婦の育成に尽力してきた森谷教授にとって、看護学校のカリキュラム自体を作ることは経験上難しいことではない。
実際、「カリキュラムはすでにブラジルで作ってきた」と笑う森谷教授だが、「基本的に教育カリキュラムはどの国でも同じ。問題はその細部をどこまで充実させ、教える側がそれを忠実に実践出来るかということ」と強調する。「しかし、理論と実際は別」と付け加える。
サンパウロ大学では各国の留学生を教えた経験もあり、「ペルーにおける看護教育の状況など基礎知識はある」と話す森谷さんだが、派遣期間中二十以上の教育関係機関や病院を視察し、その上ですでにあるカリキュラムに補足、修正を加え、「ペルーの状況や現状に沿ったカリキュラムを作っていく」考えだ。
森谷教授が第三国専門家として派遣されるのは今回が初めてではなく、九八年にはボリヴィアに派遣されている。
当時ボリヴィアで猛威をふるっていたシャガス病(蚊を媒介として伝染する。罹患すると心臓や肝臓が肥大するなどといった症状が認められ、妊娠した母親から乳児に感染する例もある)の対策委員の一人として派遣され、高い成果を上げている。
「ペルーは初めて」という森谷教授だが、ぎっしりスケジュールが詰まった予定表を見せながら、「観光なんてする暇もないようね」と笑う姿が印象的だった。
(終わり=堀江剛史記者)

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