3月22日(土)
人口十二万のワラル市の中心地にある十五ヘクタール以上の広々とした土地には日系人協会の会館が建っている。
日系人協会の各機関であるインカ学園とさくら診療所もその敷地内にあり、プールや食堂などの施設も備えられている。
鈴木アマドール・ワラル日系人協会会長は「日系移民は常に健康と教育に重きを置いてきた」と話し、「その考え方を引き継いで、この土地に貢献できていることは我々日系人の誇り」と強調する。
ワラルには日系人篤農家も多く、地元住民の信頼を得ていることは同市議会議員に四人の日系人がいることからも証明できよう。
同協会の活動について「デカセギによる人口流出が大きく、若年層欠如による活動の停滞は否めない」と話す鈴木会長によれば、ワラルにいる日系人は大体二百五十家族で、日系人協会の会員数は現在約百人。
しかし、運動会や新年会などの年間行事やインカ学園、さくら診療所と三位一体となった独自の活動を続けている。
インカ学園は八二年に創立された学校で生徒数は約八百人を数える。その約二割ほどが日系の生徒で、六十五人いる教師は全て非日系ペルー人。
日本語の授業は正規のカリキュラムとしてはないものの、現在、個人で日本から来ている夫婦が週に三回ほど日本語の授業を行っており、生徒たちの人気も高いという。
「ワラルにも日本からのボランティアはいたんですよ」と話す鈴木会長。もちろん、九一年の事件以前の話だ。
ワラル市の学校に化学や数学の指導で派遣されていた青年ボランティアたちがインカ学園や会館をよく訪れ、日本語の授業の手伝いなどをしていたのだという。
校内には三人のテロ犠牲者の慰霊碑が建っている。 「亡くなった三人とは個人的な付き合いもあった」という鈴木会長は慰霊碑に線香を手向けながら、「日本からのボランティアが再びワラルに来ることを期待したい」と話す。
「協会としてはこれから日本語教育に力を入れていきたい」と話す鈴木会長。 同協会では、現在二階建ての会館を四階まで増築し、日本語の本、ビデオや音楽などを提供する日本文化センターを作る計画を進行中だ。(堀江剛史記者)
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