4月9日(水)
[ポッソス・デ・カルダス]ポッソス・デ・カルダス市で二十五年間、柔道を教えてきた柔道家の松尾三久さん(六〇)が、去る二月三日から、同市の公立校CAIC(セントロ・デ・アテンジメント・インテグラル・パラ・クリアンサス)で新たに指導している。一方で、荒れ放題だった同校のジャルジンに生徒とともにコスモスを移植、いま花畑になりつつある。
松尾さんはこれまで、プロジェクト・イニシアソン・エスポルチで数多くの子供たちを指導してきた。市を通して、貧しい子供たちを道場に集め、素質のある者を選手に仕立てるという目的だった。しかし、近年は、子供たちが夜の稽古を厭う、来ても長続きしない、ということもあり、松尾さん自身が若干失意の状態にあった。
新局面を開こうと、昨年末、同市の飛行場の近くにあるCAICをたずね、柔道指導について校長と直接話をしてみたところ、とんとん拍子に話が決まり、二〇〇三年二月の授業開始と同時に柔道もOKということになった。
学校で一番いい場所をもらい、タタミを六十枚敷き、ローナで覆い、更衣室をつくった。雑草の生い茂ったジャルジンを耕したりして新学期の始まるのを待った。
予定当日から同校の柔道が始まった。意外だったのは、CAICの子供たちが熱心なことだった。週二回(松尾さん自身が)働くところを四回とし、残る二日は一級の生徒らにまかせ、毎日継続して練習ができるようにした。特に土曜は、午前中駆け足、午後はポッソス全体での合同練習をするまでになった。
現在、CAICの生徒が二百人。学校側がことのほか喜んでおり、最近、ほかの学校からも練習に参加したいという注文がくる。「もしかしたら、今年中に大道場建設」の可能性もみえてきた。
花畑づくり――ブラジルでは、私立校はともかく、公立校のジャルジンの多くは荒れるにまかせている。松尾さんは以前から「学校に花がたくさん咲いていて、みんながそれを大事にするようになったら、いい教育ができるのに」と考えていた。そこで、土曜日の朝の駆け足を終えたあと、三十分くらい柔道の生徒全員でゴミ拾いをしたり、耕したり、肥料運びをしたりした。
四月に入って、二月に植えたコスモスがようやく花をつけだした。学校の女性教師たちも、柔道の生徒たちがいつもしていることをようやくわかってきた、という感触を松尾さんは得ている。四月のポッソスのカンポは、コスモスの花が美しい。CAICでは学校のジャルジンにたくさん移し植えた。セマナ・サンタのころは満開になるだろうと、期待されている。