4月9日(水)
五日午後七時半ごろ、モジ・ダス・クルーゼス市ヴィラ・モラエス区モジ・ベルチオガ街道にあるシチオ内で、年金生活者浅野三男さん(八二)と妻のヨシ・カンノさん(八〇)が、頭などを切られて倒れているを訪れた娘のマリア・スエコさん(四四)が発見。近くの高速道路警察に通報した。軍警が到着したとき、頭を鍬で切られた三男さんはすでに死亡していた。また、ヨシさんも搬送先の病院で翌六日に死亡した。窓が破られた自宅内から現金三百レアルなどが盗まれていたことから、モジ第一警察署では強盗殺人事件とみて捜査を始めた。
同署によると、浅野夫妻はシチオに二人で住んでいた。同市内に住む息子らが、夫妻に毎日電話を掛けていたが、四日朝から連絡が取れなくなっていたという。五日にシチオに足を運んだスエコさんは、扉が開けたまま夫妻が不在だったことから、自宅近くを捜索。自宅から約三十メートル離れた薮の中で、頭を鍬で切られて倒れている三男さんを発見した。
スエコさんの通報で駆け付けた高速道路警察は、自宅から約三十メートル離れた薮の中でヨシさんを見つけた。全身に擦り傷を負った姿で発見されたヨシさんは腕を動かすなど生存していたが、サンターナ病院へ搬送されたが六日に死亡した。
捜査当局によると、容疑者らは建物の窓を破って侵入したと見られ、三男さんの寝室からは現金三百レアルと居間にあったビデオテープ一本が盗まれていたという。
モジニュースに掲載された息子のフランシスコさんの話では、夫妻は過去四十三年間にわたって同シチオに住んでおり、三男さんは果物を植えることを楽しんでいた。また、近くに迫ったセマーナ・サンタにはモジ市内に戻って息子らと集う予定だった。「両親に起こった事件は、他の人にも起こりうることだ」と話している。
夫妻は六日にオリヴェイラス公園内の墓地に埋葬された。
栃木県生まれの三男さんは一九三〇年、ハワイ丸で来伯後果樹園経営に従事。ヴィラモラエス区にあるゲートボールチームの監督も務め、昨年は全伯大会で優勝、一週間前には準優勝に輝いていた。
また、ヨシさんは福島県生まれで三五年にありぞな丸で来伯した。
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現在約六十の日系人家族が在住する同区にも凄惨な事件の波紋が広がっている。
ヴィラ・モラエス日本人会の下里健一会長は、事件が発覚した五日、会館で会合を開いている時に浅野さんのシチオの隣人から連絡を受けた。
下里会長が現場に足を運んだ時には、まだ鑑識関係者が到着しておらず、倒れたままの遺体などを目の当たりにしたという。「過去二十年近くで誘拐は記憶しているが、日系人が殺された事件はなかった。早く解決して欲しい」と言葉少なに語った。
また浅野夫妻と四十年にわたって交流を持つある男性(六六)は「一カ月ぐらい前に三男さんが自宅にこそ泥が入るから警戒していると話していた」と悔やむようにつぶやいた。