4月12日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】財務省は十日、「経済政策と構造改革」と題する報告書を発表し、政府の二大目標は健全財政と社会協定にあることを明らかにした。主な内容は財政黒字を国内総生産(GDP)比で最低四・二五%に保ち徐々に公共債務を縮小、低所得層への社会福祉政策を強化するという。結論として不況の原因は所得格差にあり、経済政策最大の障害は公務員年金の累積赤字であるとしている。
財務省スタッフは経済政策と社会福祉が融合する政治を理想として、富の再分配なくして経済成長だけでは貧困撲滅は困難だという。所得格差が経済不振の原因だとして、世界各国が格差是正に乗り出しているという見方をした。
隣国ウルグアイと同程度の所得格差の是正が行われるなら、ブラジルの低所得階層は三五%から一二%に減るという。もし国民総所得の一%、または社会福祉費の五%、農村労働者年金の三五%を貧困対策に投じるなら、低所得者が一五%減るとされる。
政府の基本原案は、社会保障院の累積債務を決済している資金の社会協定への転用だ。ブラジルの所得別社会階層は、十年このかた変わっていない。一%の富裕階級、九%の上中流階級、四〇%の庶民階級と五〇%の低所得階級の構成だ。
社会福祉政策は、支援能力と支援方法、チャンネルの三部分からなっている。先進国では貧困対策の対象者が少ないため支援方法とチャンネルだけで目的達成するが、ブラジルやアフリカ諸国は限られた資金で多数の対象者に対応するため支援能力に集中しなければならないのが実情。
チャンネルでは、資金に限界があるため末端にまで援助活動が行き届かなかった。また活動がお役所仕事のため、誰が貧困者で救済対象者か不明瞭な点などがあった。政府は社会福祉局を設置して、計画具体案の作成と本格的取り組みに乗り出した。教育の機会均等や栄養の補給度、医療対策にも、低所得層が置き去りにされていたようだ。
PT執行部も百日間の政権運営から、経済発展の鍵は社会福祉政策にあるとして貧困対策に取り組むことになった。財務省の健全財政とは矛盾する点もあるが、低所得層に対する疎外が失業と所得減少の元凶とみているようだ。
金融資本と通貨政策を優先した前政権のマクロ経済政策は、経済の安定をもたらしたが低所得層には恩恵が回らなかった。マクロ経済重視主義の歪み是正が、緊急課題だとPTはいう。
ルーラ大統領は、数字と取り組むだけの経済政策を戒めている。数字の背後にいる婦女子などの弱者が、見えないからだという。税制改革では党執行部も支援者らも認識が一致しているが、年金改革では見解が分かれている。公務員年金制度が社会的不平等を生んだ最たるもので、年金改革は社会協定の是正と位置付けした。年金累積債務は、単なる財政赤字の問題ではないとしている。