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デカセギ 子弟問題をサポート=教育現場で役立つ本=京都外語大学 田所教授らが出版=24時間電話相談も

4月12日(土)

 デカセギ子弟の教育問題をサポートしようと京都外国語大学の田所清克教授らはこのほど、『新・教育現場のポルトガル(ブラジル)語』を出版した。教育現場での日常会話や教室での配布プリント、健康診断などの案内を日ポ両国語で分かりやすく説明。ポルトガル語の知識を持たない教師でも、ブラジル人児童はもちろん、保護者とも意思の疎通が図れる実践的な内容を盛り込んだ。また、同教授が主宰する「ブラジル民族文化センター」は電話相談「ホットライン」も合わせて開設。学校関係者からの相談に二十四時間体制で無料で対応する。同教授は「外国人教育に熱意を持って挺身されている先生方を少しでも手助けしたい」と国内でも稀有な取り組みを語る。
 ブラジルへの理解を深め、日伯両国の友好に寄与しようと同教授は同文化センターを設立。大阪府外国人相談員を務めるかたわら、一九九〇年の入管法改正に伴い増加したデカセギ労働者の抱える社会問題をサポートしてきた。約二十年前からはデカセギ子弟の教育問題を重視し、九二年には当時としては画期的な『教育現場のポルトガル語』を出版。日常会話に加え、運動会や遠足、ケンカの仲裁まで様々な場面に対応した日ポ両語のマニュアルは、学校関係者から高い評価を受けていた。
 数多くの学校関係者らと交流を深め、教育現場の生の声を知る田所教授は、これまでにもブラジル人児童に対する日本語学級を開設したり、教師らに対するポルトガル語指導やブラジル事情の講演などを続けてきた。
 「日本独自の制度に関する説明が欲しい」「最低限のコミュニケーションはポ語でしたい」などという意見を反映させ、約十年ぶりに『教育現場のポ語』を改訂して今回の出版にこぎ着けた。
 冒頭では、児童や保護者の心の内側も知ってもらおうと、デカセギが増加した背景やブラジル国内の教育事情などを詳しく説明。
 上履きや体操服などへの名前の記入方法から、入学式やPTA総会についての案内など、教師がブラジル人の保護者に伝達する事柄を掲載している。
 また、尿検査やぎょう虫検査、歯科検診の案内なども具体的な書式と共に紹介している。
 実際に教室でブラジル人児童と接する、学校生活全般に関係する表現集も多数収録。「明日は休みです」「運動場に出ましょう」などの例文に、フリガナを付けたポルトガル語が添えられている。田所教授は「ポ語の知識がなくてもフリガナをそのまま読むだけで、意思の疎通が図れる」と話す。
 特筆すべきは新設された電話相談「ホットライン」。同書では対応できない問題について、電話で回答するほか、翻訳についても無料で応じる。
 田所教授だけでなく、ともに監修した伊藤奈希砂さんも深夜などの緊急時に対応する。電話番号は同文化センター(0721・64・8038)か、緊急時は伊藤さん(044・711・2888)へ。
 同書は一八四ページで、定価は二千円。購入の問い合わせは国際語学社(03・5966・8350)か、ブラジル民族文化研究センターへ(http://www.centro.-do-brasil.com/)。


 田所清克 一九四八年熊本県生まれ。京都外国語大学卒業後、七五年にはフルミネンセ大学留学。八七年に京都外国語大学ブラジル・ポルトガル学科助教授に就任後、現在同教授を務める。『イラセマ』などブラジル文学の翻訳に加え、ブラジル関係の書物を多数執筆。自ら主宰するブラジル民族文化センターでは主幹を務め、日伯の文化、人的交流に貢献している。