昔の人はよくぞ言ったものだ。茶道の心にも通ずる「一期一会」という言葉だ。
生涯でただ一度きりの出会いだからこそ、その場に全てを尽くす。
意味の上では理解していたつもりだが、日常生活で実感する場面は少なかった。
先日、本紙面の広告欄である男性の訃報を知った。九十歳を超えながらも、まだまだ現役としてバリバリ働く彼に、昨年幾度となく貴重な話を取材させて頂いた。
「また今度いらっしゃい」という言葉に甘え、聞き足りないことがあれば足を運んだものだ。
日系社会の生き証人の一人だった彼には、今後も取材を続けるつもりだった。だが、今はそれも叶わない。
一期一会。今、改めてその言葉の重みをかみ締めている。 (記)
03/04/12