4月16日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】米軍のバグダッド攻撃で連絡網を断たれた在イラク・ブラジル大使館から十四日、三週間ぶりに電話で「辛うじて攻撃を免れ、無傷である」と伝えてきた。連絡は新聞記者から借りた衛星中継の電話で、アマン経由であった。外務省は音信不通の在イラク大使館で、何が起きているのか案じていた。
同大使館の総務主任のアウニ・アルダリ氏と現地採用の警備員二人は十日午後、乱入した略奪者と館内で争い威嚇射撃で追い払ったようだ。大使館脇にトラックとピックアップが横付けされ、五人が備品什器を運び出そうとしていた。
被害はエアコン四個、冷蔵庫二個、発電機一個を持ち去られた。大使執務室には頑丈な鉄格子がはめられ重要書類やその他貴重品は手つかずとなったようだ。他所の警備員や警官が制服を脱ぎ捨て市民といっしょに略奪狼藉に走るなか、大使館の警備員二人は館内にマットを持ち込み昼夜、警備に当たっていると同氏から連絡があった。
アルダリ氏はブラジルへ帰化したレバノン人でイラク大使館に二十三年間勤務している。イラクの電話は全て盗聴されていたので、連絡内容には特に注意したという。自動車で市内に出るときは、政府の公用車を遠避けて運転した。自宅は政府建物の近くにあったのでともに爆破され、郊外に避難した家族の生死は消息不明だ。同氏はイラク人女性と結婚した。妻はイラクを去りたくないというが、新しい時代の到来に表情は明るいという。