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コラム 樹海


 フセイン政権は終焉し「平和」になったもののイラクの混乱は続く。暴徒と化した市民の略奪。食糧や水の不足。警察組織の再建も急ぐ必要があるし医療の不備も指摘されている。アメリカを軸とし反フセイン派を中心にする暫定行政府の設立を急ぐ動きも活発ながら社会的な混迷は暫くは続くと見たい。それにしても、イラク国立博物館への暴徒襲撃は悲劇としか言いようがない▼事態を重視した国連教育科学文化機関(ユネスコ)の松浦晃一郎事務局長は米国と緊急協議を行うが、原状の復帰は難しいのではないか。あの博物館にはメソポタミア文明などの人類の遺産が十七万点も所蔵されていた。それらが略奪されてしまったのであり、返却を呼びかけても全てが戻るの保証は何もない。今は唯─。可能な限り元の国立博物館に近い展示をと祈るしかない▼イラクにはチグリス河、ユーフラテス河があり古代メソポタミア文明発祥の地である。優れた文化財が多く人類の遺産が今に光り輝を残している。そんな世界の宝を誇り展示してきたのが国立博物館なのである。同館のジャバル館長は「ハムラビ法典の石碑までもがない」と嘆いているが暴徒となった市民らには何を考えての略奪だったのか─と問いたい▼「目には目を」の応報刑で知られる「ハムラビ法典」は、ほぼ四千年近くも昔の物である。石碑が発見されたのは一九〇二年だが、これが専門家や一般社会に与えた影響は計り知れない。その人類の宝を無謀にも盗み取って去るとは─。   (遯)

03/04/17