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援協が孤老保護=82歳「零戦」設計の元技術者か=家族の再渡航待って=30年も廃家守る

4月23日(水)

 廃墟同然の家屋に居住していた孤老の日本人男性(八二、福岡県出身)が十六日、サンパウロ日伯援護協会(和井武一会長)に保護された。この男性は旧日本海軍の零式艦上戦闘機の設計に携わった技術者。戦後、家族で移住したが、妻や子供はブラジルの生活に馴染めず帰国した。本人は家族の帰りを待って、約三十年もの間、住居を守ってきた。
 援協の定例役員会が十七日、開かれ、八巻和枝福祉部長が報告した。
 居住地はサンパウロ市内。年金生活者だが、痴ほうが進み、身分証明書などを紛失した。
 生活費に事欠き、近隣の住宅からゴミを漁って食事に当てていたという。
 家屋は放置されて、瓦も落ち、まるで廃屋。庭も荒れ放題で、雑草に埋もれている。近所の下水が敷地内に流れ込み、臭気もひどい。
 本人は住居内で生活できないと、「バナナの木の上」(八巻部長)で夜露をしのいでいた。
 デング熱を媒介するネッタイシマカが繁殖する危険がある。そのため、地域住民が援協に、男性を引き取ってほしいと、協力を求めた。
 援協は昨年から、説得を続けた。本人は、老人ホームに入る気はないの一点張り。日本に帰国した妻や子供がブラジルに戻ってくるとの思いが強かったからだ。
 そこで、家族と連絡をとり、息子が先ごろ、来伯。生活の場を日本からブラジルに移すつもりがないと、きっぱりと告げた。
 本人も日本帰国の意思が無いことを明らかにした。これで、納得したのか、福祉部が先週、自宅を訪問したおり、施設への入居を受け入れた。
 十五日、ブラジル人経営の老人ホームで、入浴、何年も溜まった垢を落とした。しばらく、この施設に滞在、様子をみて、援協傘下の施設に移る。
 その間、市が家屋の清掃に当たり、ネッタイシマカの発生を防ぐ。