こともあろうに総領事館を舞台の籠脱け詐欺。出稼ぎ中の子息が交通事故でけがをした、入院費や慰謝料を総領事館から送金してあげるので持参するように…。こんな手口で留守居の母親を呼び出し、現金二千レアルを騙まし取った。先々週の出来事だが、再発もあり得るため注意を喚起したい▼どなたも移住したころの体験があろう。最初は珍しさや郷愁なども手伝って故郷への音信はこまめだった。時が経つにつれ「便りなきは元気の証拠」と勝手に理屈をつけだんだん怠け癖にとりつかれていった。同様に出稼ぎの側も始めは近況を丹念に知らせてきたものだが、これまた慣れきって〃元気な証拠〃を地でいくようになる。留守宅も「送金があれば元気な証拠」と受けとめる。互いに案じる思いが繋がってさえおればそれでよしとしてきた▼この辺りに目をつけたのが詐欺師だ。やり方が巧妙で手慣れたものだから善人は騙されやすい。ましてやわが子が日本で病気や事故などと聞けば、気が動転し相手の言うがままに行動する。しかも総領事館の名を持ち出されたら相手を信用してしまう。被害者には同情を禁じ得ない▼こんな手口に引っかからないためにも留守家族同士の横の連絡が必要だろう。相互の情報交換によって防ぎ得るものは未然に止めることだ。今月から本格的に動き出す文協(ブラジル日本文化協会)の活動の中に「出稼ぎ者対策」が初めて採用されるはずだ。当然今回の事件も検討の対象になるだろう。 (田)
03/04/23