4月24日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】エスピリト・サント州を訪問したルーラ大統領は二十二日、司法府聖域論の内容について調査する必要があるとし、行政府の関与を示唆した。最高裁のメーロ長官は司法府が無用の長物扱いされたと憤りをもって対応した。高等裁のナヴェス裁判長も、「司法の改革は、連邦令が定めた厳然たる司法府の役目だ」と反駁し、高等労働裁のファウスト裁判長は行政府は判決にも関与するつもりかと反論した。
連邦検察庁と全国弁護士会(OAB)が発案した法制改革だが、式典に臨んで大統領は、「ブラジルは全ての国民とその尊厳のために、正義を回復する必要がある。司法機関は国民のために設立されたが、そのために役に立っていない」と大統領は糾弾した。
義賊ランピオンがいうように、裁判官は身分の高い人にへつらい、低い人に不公平な判決を下す。度々無実の人を罰し、犯罪人をばっこさせると批判した。司法府への政府介入には永い歴史があるが裁判の判決に異議を唱えるのではなく、聖域論の中身を知りたいのだと大統領は弁明した。
同州への治安維持費交付を認可し、犯罪組織が警察組織の上に君臨したことは残念だとした。麻薬に絡む犯罪組織に対しては、陸軍をはじめ全政府機関の総力戦で撲滅に当たるという。
現在では政界や法曹界、警察に根を張る組織犯罪と、企業は対決しなければならない。いつの日か政府諜報機関が闇の勢力の首根っこを押さえ、スラム街の手入れなどではなく組織の総元締めのボスを必ず引っ捕らえて見せると誓った。
当国に正義を確立するには、凶弾の犠牲となったカストロ判事のような英雄が続出するだろうが、全てを賭けて組織犯罪撲滅に挑戦すると語った。刑務所や空港の金属探知機を、議員や公団総裁、弁護士、検事などが素通りして、一般市民だけが検閲を受けるなどまかりならぬと戒めた。
いっぽう、司法府は一斉に反発した。最高裁長官は、大統領の苦言が司法府高官を市井の匹夫並みに扱ったとする公文書を公表した。国家の治安や平和な社会とは、連邦令が正しく適用され三権が調和して国政に当たることだと理解していると長官はいう。
長官は海の幸が大好物なので大統領選では、イカにちなんでルーラ候補に投票したようだ。しかし大統領府と司法府の蜜月時代は、終焉を告げたらしい。両氏の冷ややかな関係は、大統領が当選直後に行った表敬訪問で年金改革の公務員既得権に触れたときから始まった。新政権は連邦令を破壊すると、長官が公言したことから表面化した。
アウキミンサンパウロ州知事は、司法府への介入が実現するなら、ブラジルにとって大きな進歩だと言明した。これまで司法裁決には一切手出しができなかったが、近代社会は全ての公機関が相互検閲すべきだとした。
検察庁職員協会のヴィエイラ会長は、民主主義社会では裁判所も検察も全て最終的に国民の裁きを受けるべきで、民主体制の裁判所は特に透明であるべきだとした。大統領発言は、表現が少し厳しいだけと評した。