先週、とっとり熟年大学の生徒たちが、星野瞳さん指導の俳句グループと共に、アチバイアの「フローラ・ヤノ」に遠足した。一行四十九人の平均年齢は七十四、五歳、大いに歓待され満足して帰聖した。年齢からして敬老されたには違いないが、ブラジルの日系人のオスピタリダーデの濃さを改めて実感した、という感想が印象的だった▼ヤノさん方の当主は二世である。父親の代から三十年かけ、独自の日本庭園を自宅に造りあげた。父親にとっては郷愁だった。まだ日本を訪れたことがない息子がそれを継いで、より完成度を高めた。美しく刈り込まれた庭木の間に自然石を刻んだ、亀に乗った浦島太郎などがある。池には鯉が泳ぐ▼熟年大学の生徒たちを喜ばせたのは、食事であった。当初、弁当持ちで行くことにしていたが、ヤノさん方が、当方で用意する、とあっさり申し出てくれた。もちろん無償だ▼二代目の夫人の心づくしの昼食は、おにぎり、ちらしおこわ、いなり寿司、揚げ物、筍の煮物など。先代が日本から導入したというオレンジのジュースのおかわりまですすめられた▼弁当持参で行くというのに、その必要はない、どうせ私どものエンプレガードの食事をつくるのだから、ついでだから、と、相手に気を遣わせないのは、並みのオスピタリダーデではない▼「まったく縁故のない訪問者に対して…このごろの日本では、こんなことは余りないでしょうね」―遠足の主催者側は、いまこう感謝している。(神)
03/04/25