5月3日(土)
日伯両国の友好で大きな役割を果たしてきた「県費留学生・研修生受け入れ制度」。過去五千人以上の日系人を、日本に送り出してきたこの制度について、外務省は来年度から補助金を打ち切る方針であることが二日、ニッケイ新聞社の調べで分かった。母県から最初に通知された大分県人会は事態を重く受けとめ、ブラジル日本都道府県人会連合会に連絡。先月三十日に県連で開かれた「留学生・研修生問題委員会」では、中沢宏一会長らを中心に対応を検討した。県連では、各県人会の協力を受け、これまでの実績などを調査。「制度の継続は県人会の存続にもつながる」として海外日系人協会などに理解を求める方針だ。
「外務省の財政援助を受けて実施しているこの制度は二〇〇四年から廃止されることが決定している」
今年三月中旬、大分県国際交流課から送られたEメールは、同県人会にとっても寝耳に水だった。
同県人会では今年、留学生一人、研修生三人の計四人の派遣が決まっているが、一人当たりにかかる費用は約三百五十万円。そのうち半分近くを外務省からの援助で賄っているだけに、現状のままでは来年以降、二人に落ち込みかねない。
各都道府県が一律で援助を打ち切られることに、危機感を抱いた同県人会では、日系社会全体の問題として受けとめようと県連に問題提起。三十日には、中沢会長らを中心に「留学生・研修生問題委員会」を召集し対応を話し合った。
伊東信比古・大分県人会理事は「他の県人会には打ち切りの連絡が入ってない。早急に県庁に問い合わせることが必要」と、各県人会が現状を把握する必要性を訴えた。
また、自らも同制度を利用で留学した経験を持つ林アンドレー愛知県人会長は「母県を理解し、地域社会とのつながりを大切にすることと、海外に日系社会を残すことは日本にも大切」として八月の記念式典に来伯する県知事に継続を訴える、との姿勢を見せた。
この日の委員会では、各県人会ごとに母県の県庁に問い合わせの手紙を出すことが確認された。さらに県連としても、一九五九年以降始まった同制度で各県人会がどれだけの人数を送り込んだかなどの実態調査に乗り出すことにした。
調査結果を受け、県連では海外日系人協会や全国知事会、日伯議員連盟など関係団体に理解を呼び掛ける。中沢会長は「日系コロニア全体に関わるだけに、早急に対応を考えたい」と話している。