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農業からアグリビジネスへ=大豆生産 世界一に=知識集約型産業の時代

5月7日(水)

 【エポカ誌】ついにブラジルの大豆生産が、米国の生産高を追い抜き世界の大豆王国へのし上がった。昨年の大統領決選当時、金融危機に明け暮れ、銀行は財源枯渇、工業は青息吐息であったが、大豆生産者だけは記録的な植え付け増大で意気揚々としていた。農業生産者の汗が報われ、史上最大の一億一千二百四十万トンの穀物の収穫が始まった。穀類生産は年間で四千二百四十四億レアルを売り上げ、国内総生産(GDP)の二九%に達した。

 ブラジルは熱帯農業の限界を克服して、ついに世界一の農業大国となった。売上高は昨年比で三百三十億レアルを超過、農業生産者の懐を肥やしている。千ヘクタールの大豆を植え付けた農家は、サンパウロ市高級住宅街の住人と同クラスで月収二万レアルの所得を得ている計算になる。
 個人の大豆生産筆頭はマット・グロッソ州知事のブライロ・マジ氏で二十九万トン、植え付け面積は十二万一千ヘクタール、売上高は四億ドル。往年の大豆王オラシール・デ・モラエス氏から四万ヘクタールをも八年間借地した。 
 大豆生産者組合も、次々結成されている。パラナ州クリチーバ市から西へ五百キロのカンポ・モウロン市、別名3Sと呼ばれサッペとサマンバイア、サウバしかなく土地税を払えば市が寄贈するという強酸性土壌の不毛の地だった。それが組合の結成により、年間二百五十万トンの大豆を生産する穀倉地帯に変ぼうした。
 モロエンセ農業組合は大豆用のサイロ群を建設、その倉敷料は年間二十二億レアルに上る。そのほか大豆粕、大豆油、マーガリン工場、植物油脂工場、製粉工場、綿紡工場などの工業コンビナートも建設した。
 組合員七十九人で創立したが、現在は一万七千人を擁している。七二%は零細農。生産者が特に頭を悩ますのはサイロが少なくて、折角収穫した大豆を濡らして腐らすこと。モロエンセのサイロ群は絶景だ。
 大豆は流通性の高い生産物出あるため、ブラジル銀行や米系食糧メジャーのカーギルなどは、生産物を担保として植え付けに先立ち資材と生活費を前貸ししてくれる。
 生産者を喜ばせたのは為替固定性の廃止で、ドル通貨はいつも右上がりであった。融資取り付け時と、収穫時はいつも大きな為替の変動差益があり、決済の心配なく融資を申請できた。それに生産技術も、年々向上した。
 ほかに特記すべきことは南大河州の大豆が、昨年比一三・三%の増収となったことだ。種子はアルゼンチンから密輸入した遺伝子組み換え大豆で、背丈が低く収穫量が多いので「マラドーナ種」と命名された。
 大豆景気で農地の価格が高騰している。全国平均で一七%増、金融市場の平均配当率より有利だ。注目を浴びていたバイア州西部は、四〇〇%の暴騰。五年前は振り向きもされなかったマット・グロッソ州ロンドノポリス北方三百キロ地点が、ヘクタール当たり五千五百レアルもしている。
 政府は、対外収支の赤字を農産物輸出で埋めようとしている。さらに為替市場も農産物で有利に導き、基本金利の引き下げにつなげようとしている。失業率の削減も、大豆が救ってくれると大統領は考えている。農業生産者は昨年まで古い借金の決済に追われていたが、今年は農機具の更新や新車購入でデイラーがうれしい悲鳴を上げている。