5月8日(木)
日本ブラジル交流協会会長の玉井義臣さんの半生に渡る活動を、社会学者副田義也さん(筑波大学名誉教授)の目を通じて描いた「あしなが運動と玉井義臣」(岩波書店)が発行された。
社会運動家としての玉井さんの誕生は、一九六三年に始まる。母親テイさんが、同年十二月二十三日、大阪府で交通事故に出会い、翌年一月二十七日に亡くなる。補償額は、治療費を含めて百万円だけだった。玉井さんは、補償の低水準と救急医療の立ち遅れに憤ったと言う。
玉井さんは、これをきっかけにして、交通事故と救急医療、その事故への補償制度などを急進的に論じて、モータリゼーション批判、現代社会批判に及ぶ交通評論家となる。その後、三年ほどの評論家生活を終え、交通遺児家庭の救済運動、遺児たちの教育運動を組織、展開する社会活動家になっていく。そして、対象は災害遺児、病気遺児、自死遺児にも向けられていく。
玉井さんは、日本有数のボランティア団体を無から立ち上げ、国際的にも認知される「あしなが育英会」を立ち上げた。著者は、その運動を最も近くで見てきた一人である。本著は玉井賛歌ばかりではない。玉井さんの運動を、冷静な社会学者の目で描いた労作である。