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国際理解教育賞=光長さんが奨励賞=デカセギ帰国子弟調査

5月8日(木)

 奈良教育大学の光長功人さんは、二〇〇一年三月からサンパウロ州を中心に十五ヶ月滞在し、二十人の子どもに聞き取り調査を行った。その調査をまとめた論文「ブラジル人の子どもたちの教育―帰国後を調査してー」が、帝塚山大学の「国際理解教育賞論文」で奨励賞を受賞した。同賞は、今後有望な国際理解教育研究者に送られる。
 本論文は主として、日系三世のグスターボと、満(共に仮名)への聞き取り調査を中心に論じている。グスターボは現在二十一歳、十三歳から十七歳まで広島県に滞在し、現在は大学の建築デザイン科に進学。満は現在十九歳、十二歳から十四歳まで奈良県に滞在し、現在は大学の法学部に在学。
 論文の中で満さんは「日本の子どもは子どもらしく行動することが求められる。子どもは、お金を持ち歩く必要がないよう、親や大人が生活の全てを決めてくれる。しっかりとした信頼関係がそこにある社会」と、語る。一方、「ブラジルは早熟な子どもを尊重する。幼くても一人前の人間として行動するよう、しつけられる。子どもや未成年であっても自分のお金を持つように教えられ、自分が着る好みの服などに使うよう教えられる」と比較している。
 光長さんは、このような聞き取り調査の積み重ねから、日本社会で必要とされる資質を「協調性」、ブラジル社会ではそれが「自主性」だと分析する。
 それを受けて、筆者は両者の間で生じる価値観の葛藤は「客観的に見る視点」、「自己選択・自己責任」の両能力を乗り越える要因として見出す。
 光長さんは、調査を終えて、「この結果をさらに還元していきたい」と、語った。