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海外交流審議会=「日系人定義の拡充」も=外国人受入政策は国家百年の計

5月10日(土)

 日本の外国人受入れ政策などについて外務大臣に諮問する海外交流審議会(熊谷一雄会長=日立製作所副社長)の第三回総会が三月二十五日に行われ、先ごろその詳細が外務省ホームページに掲載された。この審議会は、行政改革に伴い海外移住審議会から〇一年に改組されたもの。デカセギの今後に大きく関係する事項についても話し合われた。
 総会の主な議題は「ビザ発給手続きの簡素化・迅速化」「研修・技能実習制度の改善」「在日日系人の現状と課題」「外国人受入政策の今後のあり方」など。約二十人の委員は外務大臣が任命した企業経営者や専門家が務めている。
 現在日本では、急速に進む少子高齢化に伴い、将来的に労働力が不足するため、外国人労働者を受け入れるべきという議論が経済界を中心に再度強くなってきている。
 その状況の中で、「外国人受入政策の今後のあり方」について、同審議会の小野幹事(外務省領事移住部長)は「これはまさに国家百年の計とも言うべき重要な政策事項」と位置付け、「議論の収束は難しいが、あえて取り上げて世論を喚起していきたい」という審議の意義の重要性を訴えた。
 大きな方向性としては、制度的には不法滞在者等の裏口を可能な限り閉じながら、合法的に入国できる入り口を徐々に広げていく諸制度を考えていく、としている。その延長として、欧米諸国のように学歴や職歴に基づいてポイントを与え、点数の高い人のみ入国を認める《ポイント制》の導入も考慮されている。
 デカセギに関係の深い、半・不熟練労働者の受け入れに関して、小野幹事は「日系人定義の拡充ということも考えられる」とし、現在は三世までに限られている特定ビザの範囲を広げる方向性を示唆したものとして注目される。
 一方、大来委員は、外国人労働者を積極的に受け入れる必要はないとする。外国人労働者を呼ばなくても、安い人件費の外国へ日本企業が進出して製造したほうが、社会的コストがかからない。それができないサービス業に限って受け入れる。例えば「看護婦」などは非常に不足しているので受け入れてもいいのではないか、と論じた。
 北脇委員(浜松市長)は、日系人聞取り調査の結果として、ブラジル人で通産滞在期間が十年以上の人は四一・三%と半分近く、定住化傾向を裏付けているとする。「入管法は改正されたが、国の制度がそれに見合うように整備されていないので、結局、行政サービスは自治体が引き受けてしまっている」とし、この問題に国も本腰を入れてほしいと要請した。
 外国人労働者受入れの是非については、人手不足への懸念や、経済政策としての必要性の面からだけ論じるのではなく、「日本人と外国人の人の交流が活発になる中で、日本が他文化共生だとか国際化、多様化ということを図りつつ、国際社会の中で自らの位置付けをどうするのか、二十一世紀に日本が何を目指すべきかを考える時期に来ている。外国人をどうのように受け入れるかは、その結果として必然的に決まってくる」という意見があることが報告された。
 次の総会は六月十八日に予定されている。