5月14日(水)
四月十二日に行なわれた評議員会で、文協の会長、五人の副会長が選任された。昨年からの活動が注目されていた改革委員会の動きと共に、今回の会長、副会長選挙はコロニアの耳目を集めた。しかし、選挙から一カ月が経過した今でも「インテリ二世の集まり」「顔が見えない」などの声を聞くことも多い。これから少なくとも二年間、文協改革の舵取を担うトップ六人にインタビューし、改革に対しての考えを聞くと共に、その人間にも触れてみた。
「定年退職後、隠居しようと思って去年の十二月にサンベルナルドに家を買って、引っ越したんですよね」
しかし、副会長を務める日伯文化連盟の会長、上原幸啓氏に「文協改革を手伝ってもらいたい」と頼まれては断れなかった。
「そういう訳で遠いところから毎日ここまで通ってますよ」と文協事務局で恰幅のいい体を揺すって笑う
のは、伝田英二第四副会長(六六)だ。
一九三六年サンパウロ市生まれ。四〇年から第二アリアンサ移住地に五年間滞在後、サンパウロに戻った。中学、高校での勉強のかたわら、十一歳のころから、父親の「仕事も勉強」という教育方針のもと、パウリスタ新聞社の新聞配達や納豆売りなども経験している。
故細江静男氏のすすめで同仁会に勤務し、日系ボーイスカウト、カラムルー隊の発足にも尽力した。現在でもボーイスカウト活動には携わっており、サンパウロ州のボーイスカウト活動促進協会の会長でもある。
大学では会計を学び、五七年から三十四年間、南米銀行に勤務。九一年に南銀グループの子会社、SEASUL社の社長に就任した際には、南部三州を束ねるクリチーバ母店長を務めていた。
後に親会社がスダメリス、メトロポリターナと変わったものの、SEASUL社の顔として活躍、昨年七月に定年退職した。
銀行業務に長く携わった経歴を買われて、文協の財務、管理担当として、現在過去のデータや記録に目を通す毎日が続いている。
山積した問題をどう解決し、文協の発展へ繋げていくかー。
「大変な仕事ですよ。ほんと投げ出したいくらい」
と苦笑しつつも「でも文協の将来のために今やっておかなければね」と厳しい銀行マンの顔を見せる。
過去のことをほじくりだすような事はしたくない、と話す反面、それが文協のためになるならばそれも辞さない、と伝田氏はいう。
そういう厳しい面が改革には不可欠といえるが「Se nao tem solucao, nao e problema. E natureza(自然に身を委ねるしかない)」と楽観的な面も見せる。
伝田氏の楽しみはサンベルナルドの自宅で「週末に三歳と七歳の孫と遊ぶこと」だという。
(堀江剛史記者)
■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(1)=伝田英二(66)第4副会長・管理及び財務担当=「それが文協のためになるのならば、過去をほじくりだす事も辞さない」
■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(2)=樋口トモコ 第五副会長/文協会員との連絡及び会員拡充担当=「会員拡充には、もっと宣伝が必要。マーケティング専門家を入れる話もしてます」
■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(3)=吉岡黎明(67)第一副会長/公的機関及び官憲との連絡担当=「『日系コミュニティーは日系人に何をしてくれるんだ?』という問いに答えていきたい」
■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(4)=和田忠義(71)第2副会長/日本文化の普及と保存=「一世たちが残してくれた『正直』『相互扶助』といった美点を次世代に残していくのが、我々の使命」
■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(5)=松尾治(65)第三副会長/日系諸団体との連絡担当 =「会話を通じて地方団体とも関係を作り、共には百周年を盛り上げていきたい」
■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(6)最終回=上原幸啓(75)=会長=「若者が恋人を連れて来たいと思えるような場所が、これからのコロニアには必要」