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亜国大統領にキルチネル氏=メネム氏 影響力保持狙う=次期政権に痛い「不戦勝」

5月16日(金)

 【サンパウロ十四、十五日時事】アルゼンチンの中央選挙管理局は十四日夜、メネム氏の決選投票辞退を承認。キルチネル氏が二十五日に次期大統領に就任することを確定した。
 アルゼンチンのメネム元大統領が十四日、大統領選挙決選投票への立候補を辞退したのは、惨敗による政治的影響力の低下を阻止するのが狙いとみられる。一方、決選投票での大勝による求心力確保をもくろんでいたキルチネル氏にとっては、失うものの大きい「不戦勝」になりそうだ。
 メネム氏は、世論調査の支持率でキルチネル氏に四〇ポイント前後の大差をつけられ、当選が絶望視されていた。決選投票で大敗すれば、過去の選挙で不敗を誇ってきたメネム氏の「神話」が崩れるだけでなく、正義党内のメネム派の政治家にも打撃を与えることになる。
 メネム氏と並ぶ党内実力者だったドゥアルテ現大統領が選挙前倒しに踏み切ったのは、現大統領が前任者の辞職を受け、選挙を経ないで選ばれたことが背景にある。つまり、金融危機克服に向けた「痛み」を伴う改革を進める上で、選挙による国民の信任獲得が不可欠だったわけだ。
 決選投票での勝利が確実視されていたとはいえ、第一回投票で二位のキルチネル氏の得票率はわずか二二%。メネム、ドゥアルテ両氏と比ベカリスマ性に欠けるキルチネル氏にとって、元大統領に大勝して正統性を確立する機会を失ったことは、次期政権運営で指導力発揮を難しくする足かせとなりかねない。
 アルゼンチンの次期大統領に決まったサンタクルス州のネストル・キルチネル知事は十四日夜、地元テレビとのインタビューで、就任後はブラジルやチリとの連携強化に努める考えを示した。決選投票を辞退した対立候補のメネム元大統領が親米派だったこともあり、次期政権で「米国離れ」が進むとの見方も出ている。