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在日デカセギ子弟=深刻化する教育問題=日伯でNPO立上げ=非営利ブラジル人学校を=文協の事業化も視野に

5月17日(土)

 不登校児童の目立つ在日ブラジル人子女の教育環境の改善を目指し、支援するNPO(特定非営利組織)を立ち上げようと、元サンパウロ州高裁判事の渡部和夫さんの呼びかけで、二世の識者らが議論を重ねている。会合は二年前から定期的に開かれ、精神科医としてデカセギ帰国者のケアに当たる中川デシオさんや、農務大臣補佐官で日伯政府関係者と付き合いのある山中イシドロさんといった各方面で活躍する二世たちが意見交換してきた。今後は文協内に委員会を設け、日系社会を挙げて、この問題に取り組む動きも出てきている。

 「NPOはまず全国規模のものから作るべき」「日伯両政府に顔の利く人に代表を務めてもらえれば。だれが適任だろうか」
 八日夜、文協会議室で開かれた会合には吉岡黎明文協副会長らを含む十一人が出席。回を重ねて来ただけあり、代表候補者に数人の名前を挙がるなど、具体的な話し合いが行われていた。水面下で打診を進める人物もすでにいるようだ。
 文協ビル内で集まるのはこの日が初めてだった。渡部さんは「在日ブラジル人子女の教育や健康に関わる問題は、われわれコミュニティーの課題として文協が解決に乗り出す必要があると思う」と語り、船出したばかりの新文協に対し、日本のブラジル人社会をも視野に入れた活動を訴えた。
 在日ブラジル人子女の教育問題は想像以上に深刻だ。渡部さんの報告によると、日本にいる七歳以上十九歳以下のブラジル人約四万人のうち、学校に通っているのはわずかに八千人。五人に四人は不登校という状況にある。
 「十歳までは何とか学業についていけても、それ以降の授業内容になると、言葉の壁から日本人の生徒についていけないようだ」。その結果、非行に走ったり、いじめの対象になったりと、彼らを取り巻く環境は厳しさを増している。
 日本国内には現在、民間のブラジル人学校が約四十校あるが、月に五百ドル平均という学費が家計の負担になっている。一方の経営者側も、「最低百五十人の生徒がいなければ経済的に破綻する」ともいわれ、決して楽なわけではない。
 学校が日本政府によって認可されていないこともマイナスだ。県や市から補助金が支給されないばかりか、税金控除の対象にもならない。
 「生徒数が二、三十人でもやって行ける学校が理想。日本の学校法人や各種専門学校と手を結んで利益を顧みなくて済む学校を設立したい。それにはこうした動きを推進するためのNPOが不可欠だ。実現に向けて議論を深めて行きたい」と渡部さんは締めくくった。
 八日の会合は、群馬県大泉町でフリースクール「大泉教育文化センター」を運営する知念ヴァウテルさん、在日ブラジル人問題に関心を寄せる女優の塚本恭子さんの二人が特別参加。日本でのボランティア活動の経験から積極的に意見を述べていた。