5月21日(水)
「旅は巡り会い」──。ヨットで世界一周を目指す菊地政之さん(六六、北海道札幌市在住)が四月四日にブラジル入り、アングラ・ドス・レイス港(RJ)に寄港した。「世界を見たい」と、定年退職後に計画した旅で、持病の糖尿病を押しての船出だった。今月十七日にサンパウロ市に訪れ、日系移住者と交流している。十九日午前に、来社し、ヨットの魅力などについて、語った。
ヨットを始めたのは十年ほど前。定年前は空調工事を主な事業とする企業(札幌市)の社長で、営業の関係もあって釣によく出掛けていた。
「海は広い」──。生まれと育ちは、かつて炭鉱で栄えた夕張市。札幌、夕張ともに内陸の街で、海へのあこがれは強かった。「どこにでも行ける」。
還暦を迎え、息子に仕事を譲って定年。本格的に趣味にのめり込んだ。
北海道一周、日本一周と段階を踏んで、二〇〇一年六月十日に、小樽港を出港した。
ヨット(全長十三メートル)はフランス製。妻、光子さんの頭文字をとり幸運を祈って、「ヨットビーム7」と名付けた。
カナダ・バンクーバーにまず渡り、その後、海岸沿いにメキシコ・エンセナダまで南下。エクアドル・ガラパゴス諸島を訪れた。
舵を取るラーダーが故障。いったん、メキシコに引き返して自動操舵でハワイを目指した。
ハワイでフランスから部品を取り寄せてヨットを修理、タヒチを経由して、チリ・バルゼビアに向かった。その後、ホーン岬を回って、アルゼンチン、ブラジルと北上してきた。
糖尿病を患っており、インシュリンを打ちながらの航海だ。これまで、体調を崩して寄港地の医療機関で診療を受けたことはない。 船内では、野菜を主体にした食事をとっており、主治医から、帰国後に船内での食事についてレポートを作成するよう、依頼されている。
家族とは衛星電話を使っての連絡。光子さんはロス、ハワイ、タヒチに孫とともに、応援に駆けつけた。
ホーン岬はヨットによる航海の難所のひとつと言われ、証明書を受領。「一つの区切りになった」と、手をたたいた。
さらに、発行機関の担当職員より、「日本人に証明書を渡すのは、初めて」と、祝福された。
サンパウロについて、「日本食も多いし、日本語も通じる。日系二世、三世の活躍も微笑ましい」と、第一印象を持った。
やはり「旅は巡り会い」。ブラジルでも、日系人と知り合い、在伯北海道協会(谷口出穂会長)を訪れた。
ブラジル滞在は二十五日まで。オーストラリア、ニュージーランドを経由して、〇四年八月に、小樽港に戻る予定。