ホーム | 日系社会ニュース | ――県費留学生補助金カット問題――=笛吹けど踊らず=反応鈍い県人会も=県連「早急に陳情を」=外務省はJICA=制度活用を示唆

――県費留学生補助金カット問題――=笛吹けど踊らず=反応鈍い県人会も=県連「早急に陳情を」=外務省はJICA=制度活用を示唆

5月21日(水)

 外務省が来年度から県費留学生・研修生派遣制度の補助金カットを打ち出している問題で、実態把握に乗り出したブラジル日本都道府県人会連合会(中沢宏一会長)が頭を悩ませている。各県人会を通じて、これまでの実績や母県の対応を探ろうと、調査を依頼したにも関わらず当事者となる県人会の反応が鈍いからだ。県連が今月初めに送付した実態調査表を自発的に返送する県人会はほとんどなく、やむを得ずに県連の職員が電話で聞き取り調査をしている。外務省や地方自治体が来年度の予算を編成する八月までに、各県人会を一本化して関係団体に陳情を行いたい県連の意向とは対称的に、県人会の反応は鈍いのが現状だ。
 「この制度の存続は、県人会の存続につながる。各県人会が早急に県庁に問い合わせるべき」という大分県人会の提案を受け、四月三十日に県連は対策委員会を実施。過去の留学生の派遣実績や今年度の定員などを把握することを決めた。五月上旬に調査票を発送した県連は当初、県人会が早急に母県に問い合わせることを期待したが、ほとんどの県人会が静観を保ったまま。
 予算が編成される八月までに外務省や各都道府県などに陳情したい県連だが、調査表の回収率が悪いことから職員が直接電話で聞き取り調査をせざるを得ない現状だ。「実態を把握して六月上旬には、陳情に向けた対策を練らないと」と焦りの色を見せる中沢会長は、近く全県人会関係者を集めて会合を開くという。
 県人会の反応も様々だ。
 最多となる八人の研修生を送り出す福井県人会や留学生一人、研修生五人を派遣する北海道協会のような「積極派」でも未だに状況を把握していない。また、「留学させても、その後の県人会活動に関わらない若者が多いから制度の重要さが薄れつつある」と指摘する県人会関係者もいる。
 「二世の私が会長としていられるのはこの制度のお陰」と積極的に調査に乗り出すのは愛知県人会の林アンドレー会長。自身、この制度で留学した林会長は、ブラジリアのJICAに問い合わせしたり、愛知県庁からサンパウロのJETROに出向中の職員に探りを入れたりしている。
 外務省移住政策課の担当者はニッケイ新聞の取材に対し、「(来年度以降の)補助金の確保は非常に厳しい」との見方を示した一方で、継続に向けた可能性がゼロではないと指摘する。今週から独立行政法人に移行するJICAの「国民協力活動」という制度が、その一つだ。都道府県庁の要請を受け、技術協力という形で留学制度の補助金を得ることも可能だという。
 ただし、県人会の強力な要請なしに母県を動かすのは難しいだけに、今後の県人会の対応で存続の明暗が分かれそうだ。